拾い物-3
「何やってんだ?」
ゼインが声をかけるとカリーはピクッと背中を震わせ、微妙な笑顔で振り向く。
「あ……あのね?」
挙動不審なカリーを見てゼインはビシッとこめかみに青筋を浮かべた。
カリーは色々な物を拾う悪癖がある。
彼女がこんな態度を取る時は、犬か猫を拾った時。
「犬とか猫とか拾ったとか言わねぇよな?」
拾う度に「飼いたい」「ダメだ」の押し問答の末、里親探しをするハメになる……いい加減、うんざりだ。
「違う、違うよっホラ」
カリーが路地から引っ張り出したもの……それは、ボロボロの服を着た……人間。
「………………」
ゼインはそれをジーッと見た後、視線を外してひと言。
「元の場所に捨てろ」
「ひっどぉい!犬や猫じゃないじゃん!!」
「ふざけんなっ!余計たち悪いわ!!」
「ゼインの人でなし!!」
「人聞きの悪い事言うな!!人間なんか飼えるかぁ!!」
2人はぎゃあぎゃあと5分ぐらい言い合いをした後、結局ボロボロ人間を自分達の宿屋に連れて帰った。
何だかんだ言って、ゼインはカリーに勝てないのだ。
「どぉすんだよ、これ」
自分のベットに転がっているきったないボロきれの塊を、ゼインは嫌そうに見つめる。
せっかく久しぶりにまともな寝床で休めると思ったのに、これじゃ今夜も固い床だ。
カリーが拾ったんだからカリーがベットを譲れば良い話なのだが、彼女は絶対に譲らない。
子供のように我が儘な女なのだ、カリーという人間は。
「ん〜…寝てるみたいだし……暫く様子見?」
カリーは人差し指を下唇に当てて可愛く首を傾げる。
拾った後、面倒を見るのはゼイン、可愛がるのはカリー……いつもの状況にゼインは大きく息を吐いた。
ゼインは渋々とベットに近寄り、ボロ布を剥ぎ取る。
ボロ布の中から出てきたのは、やはりボロい服を着た人間。
歳は15歳ぐらいかそれより下。
腰まである長い髪もギトギトに汚れて何色か分からないし、ガリガリに痩せた手足は細く男か女かもはっきりしない。
そして、その首と手足首には鉄で出来た鎖付きの枷がはめられていた。
それを見たゼインはビキビキッと額にまで青筋を浮かべる。
「をぃ……カリー……ここら辺はまだ奴隷制度が残っていたか?」
ドスの効いた低い声で静かに問いかけたゼインに、カリーは傾げていた首を反対側に傾けた。
「ん〜…少なくともカイザスは禁止してるけど、どの大陸もまだ根強く残ってるのが現実?」
そう、この人間は商品……愛玩用、実験用、家畜……利用価値の広い生きた商品なのだ。
鎖が短い所を見ると、どうにかして逃げて来たようだ。