拾い物-2
ズシャアッ
「!!」
両手を挙げていた男は青年、ゼインの容赦無い一撃に息を飲む。
まさか、たったあれだけの事でいたいけな少女を手にかけるとは……。
「きゃは♪怖い怖い」
しかし、少女はゼインのバスタードソードの刃の上で、ちょこんとしゃがんできゃらきゃら笑っていた。
その少女を苛立たし気に睨んだゼインは、バスタードソードを大きく払う。
「よっと♪」
少女は事も無げにくるりとバク宙してバスタードソードから逃げた。
「待て!!カリー!!」
「待たないよん♪」
バスタードソードを振り回すゼイン、それを身軽にひょいひょい避けて逃げる少女、カリー。
男は2人の物騒な追いかけっこを呆然と見ていた。
「で?何か用かな?」
10分程続いた追いかけっこは、ゼインの体力切れで幕を閉じた。
ゼインは両手を膝に置いてゼィゼィと息を荒げているのに対して、カリーはケロッとしたままだ。
この勝負、カリーの圧勝。
「あ、ああ……これからどうすんのかなあって思ってさ……」
呆然としていた男だが、気を取り直してカリーに目を向ける。
この男も一緒にカイザスのお姫様のボディーガードについていた。
次に予定がある時は直ぐに出発したりもするが、少しの間だが共に同じ仕事をした仲間だ。
報酬を貰って懐も暖かいし、一緒に酒でもどうか、と誘っているのだ。
「ゼイン?」
カリーはちょこっと振り向いてゼインにお伺いをたてる。
「あ?かまわねぇよ……ちと、買い物済ませてからな」
ゼインはバスタードソードをひょいっと背中の鞘に収めて、首をゴキゴキ鳴らして答えた。
「じゃ、6時にそこの食堂な」
男が指差した食堂を確認したカリーは頷いてゼインの元に駆け寄る。
「後でねぇ♪」
カリーは男に手を振り、2人は何事も無かったように街の雑踏に消えたのだった。
ひとつの仕事を終わらしたら直ぐに買い物をする。
携帯食料に傷用の薬草……細々した消耗品は常に切れないようにしておかないといけない。
いつでも買い物が出来るわけでは無いし、急に出発する事もあるのだ。
「こんなもんか?」
ゼインは買ったものをチェックしながら鞄に詰めていく。
しかし、カリーからの返事が無いので顔を上げて探してみると、彼女は建物と建物の間の狭い路地にしゃがんでいた。