拾い物-14
「痛ぁ〜い、何すんのよっ」
文句を言うカリーを無視して彼女に跨がったゼインは、ポロが触れていた場所を確認する。
血がこびりついたカリーの頬には、傷ひとつ無かった。
「ポロ、何をした?」
ゆっくり振り向いたゼインの目は鋭く光っていて、ポロはビクンと背筋を伸ばして必死に首を横に振る。
「何〜?」
カリーは自分で頬を擦って傷が消えてる事に気づいた。
「あれ?凄ぉい、治ってる!」
結構、深く抉られたハズなのに傷跡ひとつ無い。
「ポロ、魔法使えるんだね〜ありがとう」
カリーは笑ってお礼を言うが、ポロはビクビクと縮こまっていた。
「コラ」
「いてっ」
いつまでもポロを睨んでいるゼインの頭を、カリーは手で軽く叩く。
「せっかく治してくれたのに、睨むんじゃないわよ」
カリーは自分に跨がっているゼインを押し退けて、ポロに近づいた。
ポロは困惑した顔で今にも泣きそうだ。
「ごめんね、ポロ。ゼインって奴隷時代に魔法使いに酷い目に合わされたらしくて、魔法嫌いなのよ〜自分でも使うクセに変な奴よねぇ?」
ゼインが睨んでいるのは自分が悪い事をしたからじゃない、と分かったポロは少しだけ安堵する。
「俺のは魔法じゃねぇ」
先程、石畳を割った力は奴隷時代の肉体改造の賜物。
魔力無しでも人間の限界以上の力が出せる。
憮然として言い返すゼインに、カリーは鼻で笑って答えた。
「得体の知れない能力は魔法で良いのよ」
カリーの答えはごもっともなので、ゼインは唸りながらも口を閉じる。
その時、なんだか街がざわめき始めた。
「おい、アンタ大丈夫かい?」
「うわぁっ!し、死んでる?!」
「おおい!誰か警備兵呼んで来い!!」
会話の内容を聞いたゼインは、ぎぎぎと首を動かしてカリーに視線を移す。
その視線に気づいたカリーは「てへ♪」っと、舌を出して笑って見せた。
「てへ、じゃねぇよ」
これがバレたら完全に牢屋行きだ……ゼインはポロを小脇に抱えて急いでその場から逃げる。
「あぁんっ待ってよぉ」
カリーもゼインの後を追いかけて走り出す。
なんだかうやむやな感じで、奇妙な3人組の旅が始まった。