拾い物-13
「くっ……ハハハッ」
血が滴る口を手で押さえたスランは、いきなり腹を抱えて笑い出す。
そんなスランをカリーは睨みつつ、手の甲で唇を拭った。
「次……会うのを楽しみにしてる……カリー」
スランは自分の唇を舐めてから覆面を被ると、スッと屋根から消えていく。
「…………うぅ〜…私の……私のファーストキスぅ!!返せ!!馬鹿ぁ!!」
どんな事があろうとも、キスだけは心底惚れた相手と……と、大事に守ってきたファーストキス……それをあっさり奪われたカリーの叫びは、暗闇の中に溶けて消えていった。
「カリー!」
やっと姿を見せたカリーにゼインは内心安堵する。
ポロもとっくに気がついており、カリーの姿を見て少しだけ安堵の表情を見せた。
「怪我は?」
「ん……擦り傷」
ゼインの問いかけに無愛想に答えたカリーは、グイグイと唇を拭っている。
「?何かあったか?」
「え?」
ゼインの心配そうな声に、カリーはハッと我に返った。
「様子が変だ」
カリーはゼインの顔をじっと見て考える。
もし、ゼインに話したら彼はどんな反応をするだろうか……嫉妬して怒り狂うだろうか……?
カリーはあり得ない考えを頭から追い出して、ゼインにいつもの笑顔を見せる。
「1人だけ強かったんだぁ〜でも、途中で逃げたから……ゼイン、何かしたぁ?」
カリーはわざとらしく大きくへこんだ地面をコツコツ足で踏んだ。
ゼインはしらっとそっぽを向いて誤魔化す。
その2人を交互に眺めていたポロは、ふと何かに気づいてカリーに近づいた。
「ん?どうしたの?」
カリーの服を掴んでクイクイ引くポロに促されて、カリーは手を膝に置いて少し屈んだ。
手を伸ばしたポロはカリーの頬を流れる血に手を触れる。
「ああ、屋根の破片が飛んできたから……大丈夫よぉ〜?ポロは優しいねぇ」
カリーはポロの手に自分のを重ねて、頬をすりすりした。
その時、ポロの手が青白い光を放った。
「?!」
ゼインは咄嗟にカリーの服を掴んで力いっぱい引く。
「きゃっ」
思いっきり後方に投げられたカリーは尻餅をついて悲鳴をあげた。