浄化-7
二人の息はまだ荒かった。そして全身がじっとりと汗ばんでいた。
「やっぱり、だめだ、俺・・・・。」
「どうして謝るの?」
「だから、強烈な罪悪感があるんだってば。」
「よくわからない・・・。」
「なんか、嫌がる真雪をレイプしてるみたいで・・・・。」
「大好きな人がイく時、あたしの身体の中に出すことを嫌がるわけないよ。」
「でも・・・・。」
「ありがとう、龍。ほんとに優しい人。」真雪は微笑んだ。「でも、そう言いながら今日は何だかすごく長くイってたみたい。」
「俺、生まれて初めて二度続けてイった。」
「そうなの?」
「自分でもびっくりしたよ。」
「でも、龍はたいてい三、四回はイくじゃない。一晩に。」
「いや、いつもはさ、真雪と話してたり、触り合ってたりして、また興奮が高まって、っていうパターンなんだ。でも今日は違ってた。イったあと、終わった、と思う間もなく、また押し寄せてきたんだ。」
「龍も二回、イってくれたんだ。あたし、嬉しい。」
「ごめん、いやだっただろ?いつまでも咥えてなくちゃいけなくて。」
「ううん。龍があたしのためにたくさん出してくれてるって、とっても嬉しかった。」
「本当にごめん、真雪。」
「まだ謝ってる。でも龍が思う程、あたしこれ嫌いじゃないな。」
「うがいしに下に行こうよ。」龍は上半身を起こした。
「えー、いやだよ。」真雪は横になったまま首を振った。
「気持ち悪いだろ?口の中。」
「全然。ずっと余韻を味わっていたいぐらい。」
「そ、そうなの?」
「すっごく美味しかったもん。嘘じゃないよ。」
「美味しいわけないじゃん、あんなの。」
「味、とかじゃなくて、何て言うかな、口の中に当たる刺激とか、心地よい温かさとか、」
「温かい?それってとっても気持ち悪いと俺は思うんだけど・・・。」
「だって、愛する人の体温を直に口の中に感じることができるんだよ。心地よいに決まってるよ。」
「そ、そうなんだ・・・。で、どんな味なの?」
「味はねー、ちょっと苦い。」
「うわ、それはつらい。さすがにいやだよね。」
「それが不思議とまずいとは思わなかったんだよ。」
「えー、苦けりゃまずいでしょ、いくらなんでも。」
「あたし、今ならビールだってワインだって飲めるかもしんない。」
「何だよそれ。」龍は呆れて笑った。
「あたしもう大人だからね。ビールの味ぐらいわかるよ。」真雪も笑った。
龍は再び真雪の傍らに横たわった。そして申し訳なさそうに上目遣いで言った。「真雪はイけた?」
「イけたイけた。もうすごいよ。」
「え?そんなに?」
「龍だってもうわかってるでしょ、あたしがイく瞬間。」
「そりゃあね。」
「龍のものを咥えて、口の中に出されて、大切なところは龍が口で刺激してくれて・・・。いつものセックスと全然変わらなかった。上と下が逆になっただけ、って感じだよ。」
「なるほど・・・・。」龍は妙に感心したようにうなずいた。「でも、もうしないからね。当分。」
「わかってる。ごめんね、いやなこと、無理させちゃって。」
「うん。そうだよ、いやだ。やっぱり。」龍が威勢よく言った。
「なに思いついたように・・・。」
「今日の方法だと、できないことがある。」
「できないこと?」
「そう。キスができないこと。それに真雪のおっぱいがいじれないこと。」
真雪は破顔一笑した。「そうか。そうだったね。」
「この『サラダ』がないと、やっぱり物足りないよ、俺。」龍はそう言いながら真雪の二つの乳房の間に顔を埋め、頬を何度も擦りつけた。
「俺の真雪・・・・・。」
「龍ったら・・・・。」真雪は龍の頭を愛しそうに撫でた。
しばらくの沈黙を二人は満ち足りた気持ちで味わった。
「龍、」
「うん?」
「あたし、早くあなたと一緒にお酒が飲みたい。」
「どうして?」
「あなたで頭をいっぱいにして、あなたで身体を満たされて、あたし、夢見心地であなたに抱かれたい。」
「俺さ、」龍が慎重に言葉を選びながら言った。「真雪はもう、お酒なんか飲まない、って言い出すかと思ってた。」
「あんなお酒はもう二度と飲まない。でも、自分がお酒でどうなるかわかったから、もう間違わないよ。あたし。」
「そうか。そうだよね。」龍は真雪の髪を指で梳いた。
「龍、」
「なに?」
「あたしの手、ずっと握っててね。」
「放すわけがないよ。もう二度と。」龍は真雪の指に自分の五本の指を絡ませた。「絶対に。」
「好きだよ、龍。・・・・愛してる。」
「俺も。愛してる、真雪。」
真雪はそっと目を閉じた。龍は彼女の唇に自分の唇をそっと押し当てた。