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ゼビア・ズ・ショートストーリー
【ファンタジー その他小説】

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ハーモニカの君-5

 その頃、次期国王代理の部屋では……。

「……意外……」

 窓辺で歌っていたアースに、キャラが目を丸くしていた。
 男性パートを一番始めに歌い出したのは、実はアースだった。

「何が?」

 アースは窓を閉めて魔法で部屋の冷気を飛ばす。

「あんたが歌うの初めて見た」

 歌うのも意外だし、結構上手かったのも意外。

「お褒めの言葉を賜り、恐縮です。キアルリア姫」

 おどけて大袈裟に礼をしたアースは、ソファーに座っているキャラの横に座る。

「お前も歌うか?」

 歌詞教えようか?と言うアースに、キャラは渋い顔を見せた。

「歌はちょっと……」

「……お前、結構苦手なもん多いよな」

 料理はダメ、ネズミもダメ、古代文字もダメ、更に歌もダメ……戦い以外に得意なものがあるのか、と問いたくなる。

「踊りは得意だもん」

 キャラはいじけて頬を膨らますが、結局、体を動かす事にしか能が無いと言っているようなものだ。

「子守歌ぐらいは歌えるようにならねぇとな」

 アースはニヤニヤしながらキャラをソファーに押し倒して、深く口づける。


 その日から、2つの月が満月の夜は街全体で合唱するのがゼビアの慣わしとなったのだった。

ーハーモニカの君・完ー


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