『BLUE』-5
そんな上の世界に住む人間から可能性を断たれる一言を通告されたらひとたまりもない。
わずかにあったプライドは完全に萎縮してやがて消滅してしまうだろう。
(でも・・・)
涼生には最初からそんなプライドさえなかった。
だから彼は素直に言えたのかもしれない。
「・・・どうすればいい?」
涼生は精一杯頭を下げて頼み込む。今の彼に出来る最大の範囲で。
水原は何も答えない。
涼生が顔を上げると彼女は今まで見せたことのないような真摯な表情を彼に向けた。
「俺たち、次の大会が最後なんだ。」
「!?」
「生徒会で廃部が決定したんだ。オレも結構粘ったんだけど他の部員は諦めちゃってね。」
「知ってるよ」
彼女は仰向けに浮かんで天井をにらむ格好になった。
「アンタが最近ずっと気を張ってたのも、木本くん達が元気なかったのも多分そういうことだなって思ってた。」
涼生は苦笑した。
普段、自分のことしか考えてないヤツだと思ってたのに。
「水原・・・」
「大丈夫。私がアンタを助けてあげる。」
水原は笑った。
彼女のこんなに優しい瞳を見たのは初めてだった。
「涼生なら大丈夫だよ・・・」
彼女が笑うと不思議と焦りは消えていた。
同時に体の奥が熱くなる。その時はまだ、胸につかえ始めた気持ちに気付くことは出来なかった。