『BLUE』-43
「俺、決めたよ」
ブロック塀から滑り降りると涼生は言った。
「何を?」
「本格的に、泳いでみようと思う。大学に入って、もっと自信をつけて・・・いつか五輪を目指したい」
涼生は真剣な目をして言った。
「進路、決まったんだ。どこの大学?」
「うん、まだ決めてないけれど。出来ればあまり偏差値が高くなくて、それで水泳の強いところに・・・」
「ちょっと。情けないこと言わないでよ」
と水原が呆れた声をだした。
「勉強なら、私がみてあげるから」
「え・・・お前だって自分の受験があるだろ」
彼女は肩まで伸ばした髪をなでると、じっと過ぎ去っていく飛行機の方向に目をやった。
「別に、いいのよ。一人で受けるよりも二人のほうが心強いでしょ?」
「え・・・?」
「私、アンタと同じ大学に行く。でも、こっちのレベルに合わせたトコ受けてもらうからね」
と水原は悪戯っぽく笑うと声高々に宣言した。
「目標五輪。打倒深間!
とりあえず明日から猛勉強だけど・・・」
「・・・本当にいいのかよ」
涼生の心配など意に介さずに、彼女はすっかりやる気をだしている。だが、水原の顔はそれが安っぽい請け合いではないことを証明していた。
「わかった。また明日からよろしく頼むよ」
涼生は苦笑しながら彼女と一緒に青く光る海岸線を見つめた。
end