『BLUE』-36
「うん、分かった」
と、言って繋いでいた手を離した。
「明日、信じてるからね」
空は晴れやかに澄み渡って晴天と呼ぶに相応しい天気だった。
昨日の空より良い空気が流れてる気がする。かすかに目を開けると、白い積乱雲が視界にぼやけて見えた。
「熱いね、今日は」
声のしたほうを振り向くと木本がすぐ傍に立っていた。
「おはよう。皆はまだ?」
「少し遅れるみたいだけど、たぶん大丈夫だろ」
木本が時計を見ながら言った。二人はしばらく正面口で待ちながら人が流れていくのを眺めていた。
「・・・遅いな」
木本は通りに顔を突きだすと、自分が来た道をしげしげと見つめた。
「電話してみたらどうだ?」
そうだな、と頷いた木本がもう一度見渡すと、向こうから息を切らせて駆けてくる水原の姿があった。
「おはよう、二人とも」
人込みの中に涼生達を認めると彼女は手を振りながら近寄ってきた。
「水原、ウチの部員知らないか?」
木本が困り果てたように言った。
水原はああ、と頷いて、
「アイツ等なら女子部のバスが来る途中に拾ったわ」
「お前等、送迎用のバスなんかあるのかよ」
「後、何分くらいで到着するか分かるかな?」
と涼生は言った。
「少し前の渋滞で止まってたから、もうちよっとかかるわ。選手登録の時間までギリギリだったから、代表の私だけ先に来たの」
「あ、もうそんな時間か」
時計を確認すると午前八時を回っていた。受付は八時半で終了するからバスは間に合わない。
「ちょうどいいから涼生も一緒に行こうよ」
水原が涼生の手を取って門の方に歩きだした。
「おい、待てよ。それは部長の仕事だろうが!」
と木本が怪訝な顔をして追ってきた。
「俺が行くのが道理だ」
「アンタが部長なの?」
水原は信じられないという顔で、振り返った。
「そうだよ」
と涼生は言った。
水原はしばらく考える素振りをしていたが肩をすぼめて苦笑いをすると、彼女はフーっとため息をついた。
「しょうがないわね。ついてきてもいいわよ」
「当たり前だ!」
木本は目を吊り上げて怒鳴ると、二人を追いぬいてすたすたと歩きだした。