『BLUE』-22
「深間君・・・」
涼生は彼の名を口にした。ライバルとなる彼の目を真っすぐに見つめて言った。
「今日は負けたけど・・・大会は俺が勝つよ。
800か1500に君が出てきてくれればまた会える。
今度は俺の土俵で勝負しよう。」
とんでもない相手にとんでもないことを言ってる気がしたが涼生は本気だった。全て承知の上で彼に挑戦状を叩きつけているのだ。
「そっか。皆瀬君は長距離の選手だったね。」
深間は口に手をあてしばらく考える様子を見せていたが、やがて決心したように頷いた。
「いいよ。それに出るから。だけど僕からも一つお願いがあるんだ。」
何、と涼生は聞き返す。
「リレーに出てほしい。」
「リレー・・・?」
うん、と彼が頷く。涼生は首を傾げてもう一度聞き返した。
「メドレーリレーだよ。800Mを背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライ、自由形の四人で競い合うんだ。各高校の代表が参加する競技だから一番注目されるし面白いんだよ。」
今更経験者に当たり前の様な説明を丁寧に教えてくる深間の姿に苦笑した。
本当に真面目な男だ。
涼生は迷う事無く即答する。
「別にいいよ。言われなくても出るつもりだったから。」
「ホントに?ありがとう、これで大会まで目標ができたよ。」
水原から聞いたことがあるが清新工業のリレーチームは昨年の大会で見事優勝したほどのメンバーだった。おそらく今年も彼らは優勝候補筆頭・・・
一瞬『不安』の二文字が涼生の脳裏にちらつく。
だが涼生は悩んでる時間よりも少しでも練習に時間を費やす事を選んだ。
そしてある一つの決断をする。
――もし彼に勝てたら
その時は・・・
この気持ちを彼女に伝えよう。
今、芽生え始めたばかりの小さな想いに素直に誓った。