第一章 卑劣な罠-9
「い、嫌ッ! お願いします! 約束は守りますから、せめて日を改めさせてください」
「駄目だって言ってるだろ!」
「アッ―――!?」
両脚が開いたとたん、大村がガバッとヒップの間に顔を押し付けてきた。
「ああ……奥さん、あんた、肛門まで綺麗だね〜。毛が一本も生えてないなんてさ、俺のものとは全然違うよ」
「い、嫌ッ……お願い……やめてください」
夫にさえ触れさせたことのない箇所にいきなり舌を当てられ、美優はひどく狼狽した。
「なんだよ、しょっぱい味しかしないじゃないか。どれどれ、匂いのほうはどうかな……」
掴んだ尻肉をグイッと左右に割られ、美優は咄嗟に腰を引いた。
いくらなんでも横柄すぎる態度に、美優が怒りに満ちた表情を大村に向ける。
「いくらなんでも酷すぎます! 私を抱きたいんであれば早く抱いてください! こんな、こんな変態じみた事は止めてください!」
美優の叫びに、大村の顔からスーッと表情が消えた。
「奥さん、勘違いしちゃいかんよ」
「なっ……なにを……?」
「これは取引だが、あくまでも絶対的な権限はこっちにあるんだよ。そこのところをちゃんと理解してもらわないと」
大村が無表情で冷たく言い放つ。
「で、でも……あんまりです」
「あんたね、あの写真がどれほど重大な物なのか分かってる? 俺をあんまり怒らせないほうが身のためだよ」
大村の言葉に、身体の芯に恐ろしい悪寒が走りまわった。
(こ、この人……もしかしたら、ずっと私をつけまわしていたのかもしれない……)
再びニヤつきはじめた大村を前に、美優の恐怖は頂点に達していた。
と同時に、この陵辱から逃れる術が完全にないことを思い知らされた。
「奥さん、そこの壁に手をついて脚を開き、おもいっきり尻を突き出しなさい。いいか、二度も同じことは言わないよ。俺が同じ言葉を二度吐いたときは、そんときは取引が消滅したって事だ。すなわち、奥さんと旦那さんの破滅を意味する」
卑劣極まりない言葉だった。
ほんのしばらく呆然と立ち尽くしていた美優だったが、大村の眼にグッと力が入った瞬間、呪縛にかけられたようにあわてて後ろを向いて壁に手をついた。
「よしよし、素直になったじゃないか。ふふふっ」
大村は、従順になった美優の態度が愉快でならなかった。
町内で常に噂の的となっている美人妻、美優。
その美貌に、男なら誰もが『抱いてみたい』という願望を抱かずにはいられないだろう。
その美人妻が、いま眼の前で全裸になり、なおかつ忠誠の姿勢をとっているのだ。
正直、飛び跳ねて踊りたい気分でもあった。
大村は、しばし、尻を突き出している美優の裸体に見入った。
傾斜になっている背から胸元を覗くと、たわわなバストが何ともエロティックな形で下がっている。
これまで何人かの女を盗撮によって毒牙の餌食にしてきたが、今回の獲物はとびっきりの極上物だった。
一年かけて追い回した甲斐がある。
大村の口が勝ち誇ったように歪んだ。