第一章 卑劣な罠-8
(ああ……あなた……ごめんなさい……ごめんなさい)
夫に謝罪しながら、心だけは決して折るまいと強く自分に言い聞かせる。
「どうした? 自分で脱げないのなら俺が脱がせてやろうか?」
「い、いえ、結構です」
色欲に狂気した男をキッと睨み、美優は屈辱に顔を歪ませながらスルスルとパンティを押し下げた。
「ほほう、いいねいいね、凄くエロいよ! まさかこんな冴えない男の前で全裸になるなんて、夢にも思わなかっただろうに。うひひ」
大村が、下品に笑いながらスラリと伸びている美脚の先から頭のてっぺんまでをじっくりと見定めていく。
ギョロリと見開いているその眼が、まるで商品でも値踏みしているかのように、両脚、Vゾーン、ウエスト、バスト、それに首から顔まで時間をかけて見つめている。
劣情まみれの気色ばんだ顔が、美優の恐怖心をゾクゾクと総毛立たせるほど煽り立ててきた。
「奥さん、後ろを向いて」
男の意図が分からぬまま、美優は言われた通りに後ろを向いた。
「ううむ……キュッとくびれた腰のラインがいいねえ。尻がうんと色っぽく見えるよ。だらしなく垂れ下がってもいないし、尻たぶの膨らみ具合もスケベな感じで……こりゃあ、極上の尻だな」
大村の事細かな実況は、美優の肉体から落ち着きを取り払った。
「奥さん、ジムにでも通っているのかね?」
「は、はい。週に一度ですが」
「ふーん、その賜物か……。いや、元がいいから崩れにくいんだろうな、このスタイルは」
大村は、自分の言葉に納得しながらスッと起き上がった。
そして、ゆっくり美優の背後へ近づき、優美なヒップの前でしゃがみ込んだ。
「奥さん、脚を開きなさい」
「えっ!?」
「聞こえなかったか? 脚を開けと言ったんだ」
「あ、あの……」
「んっ? どうした?」
「きょ、今日はすごく暑かったので、ひどく汗を掻いています……よかったら、その……シャワーをお借りできませんか?」
こんな状況においても、清楚で上品な性格が気高いプライドを保とうとした。
いくら憎い男が相手とはいえ、汗によって汚れている身体には触れて欲しくない。
それは女として当たり前の心情だろう。
「あらら、奥さん、ここは店舗なんだからさ、シャワーなんてあるわけないだろう?」
「そ、それだったら、どこか別の場所で……」
「それは承知できないね〜。いいじゃないか、シャワー浴びてもすぐに汗まみれになっちゃうんだしさ。それにね、俺は奥さんの生の匂いを嗅いでみたいんだよ。こんな美人でもさ、どっか一箇所くらいは俺と同じ匂いがするんじゃないかって。そう思うと、堪んないくらいワクワクしてくるよ」
変態じみた口ぶりで言いながら、大村が強引に両脚をこじ開けていく。