第一章 卑劣な罠-7
プチッ―――
ホックを外し、躊躇いながらも肩紐を腕から抜いていく。
バストが露出しないよう、腕を交互に入れ替えながらブラカップを胸から取っていった。
「奥さん、手が邪魔だ。どけなさい!」
さっきまで笑い面だった大村が、睨みつけるような顔で叫ぶ。
爬虫類のような眼で鋭く睨まれ、美優は思わずビクッと肩を跳ね上げた。
「聞こえなかったのか? 早くどけなさい!」
徐々に粗暴の悪さが目立ちはじめてくる大村。
そんな大村の態度に、美優は背筋に冷たいものを感じた。
いっそう強く睨みつけてくる大村を前に、恐怖心を沸かせた美優が恐る恐る腕を下げていく。
豊かなバストをぴったりと包み隠していた腕は、1本、そしてまた1本と、下に伸びた。
「ほう、これは実に見事な乳房だ……」
眼をギラつかせながら、大村がジイッと胸元を見やる。
美優の心は酷く揺れていた。
怒りと嫌悪感はいまだ胸奥に渦巻いている。にもかかわらず、まるで蛇に睨まれた蛙のように身体の自由がきかない。
決して崩れることのなかった心と身体のバランスが、この不条理な取引と邪悪な男によって大きなズレを起こし始めていくようだった。
「28才にしてこの張り具合……ふふふっ、お椀型の乳房が重力を受けて、何とも厭らしい感じで下乳に膨らみを作っている。肌理の細かな肌も魅力的だが、揉み甲斐のありそうな、この膨らみはさらに魅力的だ。乳輪にしても、乳首にしても、綺麗な桜色で申し分ない。うん、気に入った! これはもう、見ているだけというのは体に毒だ。さあ、最後の一枚も早く取りなさい」
大村は、情欲丸出しで言葉を放った。
なんて卑劣な男なの―――。
胸の奥でそう叫ぶも、身体は恐怖で硬直してしまっている。
大村から顔を背けられない。
そんな美優の視線が、不意に男の獰猛な生き物を捉えてしまった。
「あっ―――」
恐怖がさらに心の中で膨らみ上がった。
あぐらをかいている大村の股間では、情欲の塊となった雄のシンボルが落ち着きなく蠢いていた。
別に大村自身が手で触っているわけではない。
そこにいる邪悪な塊が、焦れたように勝手に動いているのだ。
眼の前にいるのは本当にあの大村なのだろうか―――。
そう疑わずにはいられぬほど、この痩せこけた中年男性には気迫が漲っている。
美優は、必死の思いで息を吸った。
そして、圧倒的な迫力の前に逆らうことも出来ず、おそるおそるパンティの縁を掴んだ。
「さあて、美人新妻のマ○コのお毛毛の具合はどんな感じだろうなぁ」
下劣な言葉に怒りが込み上げてくるが、反抗出来ない。
しかし、最後の一枚を脱ぐことにはさすがに躊躇いが生じてしまう。
本当にこれでいいのかと、美優は何度も自問自答を繰り返した。
だがやはり、どんなに頭を働かせても大村に逆らう術が出てこない。
美優は、縁を掴んでいる指先をブルブルと震えさせながらもその手に力を込めていった。