第一章 卑劣な罠-5
「だったら私も旦那さんと同じように見てもらえませんかね?」
「くっ……は、はい」
大村の執拗な質問に、美優が消えそうな声で返事をする。
「ちゃんとシャブってくれるんですね?」
「そっ……」
「その色っぽい唇で、私のチ○ポを扱いてくれるんですね?」
「ふう……は、はい」
「そうそう、潔ぎよくしなくちゃ」
折れた美優をギラついた眼で見やりながら、大村はそそくさと店の入り口ドアに【CLOSE】のプレートをかけた。
そして、手招きしながら美優を奥の部屋へと連れて行った。
連れて行かれた6畳間の部屋には、すでに布団が敷かれていた。
カーテンを閉め切っている為、部屋は薄暗く、なんとも辛気臭い。
少しジメッとした感がある。
こんなところで行われようとしている屈辱の取引に、美優はあからさまに嫌悪を表した。
「大村さん、写真とネガは本当に返していただけるんですよね?」
切れ長の眼に力を込め、念を押すように美優は聞いた。
「必ずお返しします。それは信じてください」
いつもの柔和な表情で言う大村に、少しばかりではあるが美優の胸には安堵が湧いた。
一度でいい……たった一度だけ我慢すれば……。
そう信じ、ギュッと唇を噛み締めながら、美優はあらためて覚悟を決めた。
「それじゃあ、さっそくですが、服を全部脱いでもらいましょうか。その素晴らしいスタイルを生でじっくりと拝見させてください」
大村は、自身も服を脱ぎながら優しい口調で命令した。
「は、はい……」
ひとつ小さな溜息をこぼしてから、美優は苦虫を噛み潰した表情でTシャツの裾を握った。
そして、ゆっくりとその手を持ち上げていった。
が、胸元まできたときに動きを止めた。
大村の厭らしい視線に、躊躇いが生じたのだ。
同時に、再びこの不条理な取引に対して怒りが込み上げてきた。
(駄目……ここは我慢するのよ……こうするしか方法はないんだから……)
高ぶる感情を必死に抑えた。
そんな美優の気持ちを察してか、すでにパンツ一枚となっていた大村がフッと襖を開けてどこかへ行ってしまった。
(えっ……どこへ行ったのかしら? もしかして、過ちに気付いて気が変わった?)
美優は、持ち上げた手をいったん下げた。
心の中で、微かな期待が沸いた。