第一章 卑劣な罠-4
「大村さん!」
静かな奥の部屋に向かって、美優は叫んだ。
「はい?」
奥のほうから、大村が姿は見せずに声だけを返してくる。
「ど、どうしても駄目なんでしょうか? 私、他の事なら何だってします。ですから、お願いします。どうかその写真とネガを私にください」
美優が、最後の願いを込めて訴えた。
「駄目ですな。私はあなたの身体以外には何の興味もありませんから」
絶望的な大村の返事に、総身がブルブルと震えた。
何か良い手はないのかと必死に頭を働かせてみるが、混乱しきった脳では絶望の二文字以外には浮かんでこない。
「明日、とりあえずマスコミに電話してみますよ。彼らが食いついたらネガを売ります。もし興味を示さなかったら、そのときは旦那さんにお渡しします」
「そ、そんな……」
恐ろしい事を淡々とに言われ、全身からスーッと力が抜けていく。
青ざめていく美形が怒りから絶望に歪んでいき、大きめの唇は小刻みに震えていた。
(孝之さん、ごめんなさい……方法が見つからない……)
美優は、長い睫毛を揺らしながらスッと瞳を伏せた。
そして、小さく溜息をついてから口を開いた。
「わ、分かりました。先ほどの取引を……お、お受けします」
震える声で言う美優の前に、大村がニコリともせぬ真顔で姿を現して意地悪に聞き返した。
「先ほどの取引とは?」
「で、ですから、私の身体を提供いたします」
「それはすなわち、私に抱かれるって事ですかな?」
「は、はい……」
「奥さん、私のチ○ポをシャブれますか?」
「なっ―――!?」
「ずっと使用していなかったこの汚いチ○ポを、あなたがちゃんとシャブってくれるかどうかを聞いてるんです」
「そ、それは……ひ、必要なことでしょうか?」
「はあっ? 必要なことでしょうかって、あはは、こりゃ参ったな。貴女の言うセックスとは、単にチ○ポを入れるだけの行為を指すのですか?」
「そ、それでは……ダメなんでしょうか?」
「奥さん、犬や猫じゃないんだからさ、入れて出してハイ終わりって事はないでしょうよ。それとも何ですか、奥さんとこは犬猫のセックスばかりやってるんですか?」
「そんな事はありません」
「それじゃあ何ですか、私が犬や猫と同じってわけですか?」
「い、いえ……そんなつもりでは……」
下品な大村に、いよいよ虫唾が走った。