第一章 卑劣な罠-12
距離が近いため、亀頭が顔を覗かせた瞬間、ムッとするような臭いが鼻をついてきた。
(こ、こんなものを口に含むなんて……無理……できない……)
パンツをスルスルと毛むくじゃらの脚に滑らせながら、美優は眼の前でユラユラと不気味に揺れ動くものに何度も息を呑んだ。
夫のものとはまるで違う、おどろおどろしいペニス。
それは、赤黒い先端に黒ずんだ幹部分、大きさも夫のものより一回り大きい。
先端のエラが異様に張っており、まさにグロテスクというにぴったりの代物だった。
「見慣れている旦那さんのものと比べてみなさい。どっちが大きい?」
足元に落ちてきたパンツを自分で蹴やりながら、大村が野卑に聞く。
「お、大村さんのほうが大きいです」
「ほう、そうかね。だったら、たっぷりと奥さんを愉しませてやれそうだな」
ニヤリと笑む大村。
美優は、ギュッと心臓を掴まれたような痛みを覚えた。
大村の言葉が、いや、眼の前で揺れ動いているグロテスク棒が、これから始まることを再認識させた。
室内にはクーラーがついていない。
二人とも、いつしか浮き出てきた汗によってネットリと肌が濡れている。
それが、全裸となった二人の男女をより淫靡に生々しく映していた。
「奥さん、手は使わずに、その色っぽい口だけでこいつをしゃぶってくれ」
「て、手を使わずに……」
「そうだ。口だけで咥えて扱きなさい」
美優の頬が怒りと屈辱で強張った。
が、有無を言わせない恥辱の命令に、不可解にも妖しい愉悦が沸いて、それが秘孔の粘膜を湿らせた。
始まる……いよいよ始まる。
結婚してからずっと夫だけを愛してきた。
夫だけに尽くしてきた。
その気持ちは今でも変わらない。
しかし、今からその夫を裏切らなければならない―――。
罪悪感が頭と心を埋め尽くした。
美優は、固く閉じた瞳からボロボロと涙をこぼした。
「奥さん、泣いたって何も解決しないよ。早くしなさい」
冷たく言い放つ大村の言葉に、美優はつよく唇を噛んで耐えた。
そして、ひとつ大きな溜息をついてから、ゆっくりと異臭の立ち込める男の股間へと顔を寄せていった。