王様じゃんけん-8
「なるほど…… 王様の命令は絶対なのですね? ふむふむ…………」
「だからさ、もう面倒だから…… これで俺たち三人の未来を決めてしまうなんてどうだ?」
「ちょ………… あなたたちそんな大事な事を…………」
私の考えなどまるで無視するかのように、
ふたりとも首を縦に振ってはすっかり意思疎通している様子。
「ユイが勝てばこのままの関係で♪」
「俺が勝てば…… やっぱりこのままの関係かな?」
「そして姉様が勝てば………… きっとこのままの関係なのでしょうね♪」
「だ、だからっ それじゃなんの解決にもならないって……」
「解決? むしろ満場一致じゃね?」
「そうですよ♪ 姉様はただ納得出来る理由が欲しいだけなのですから♪」
ユイの言葉に開いた口が塞がらない。
それは呆れているわけでも、怒っているわけでもない、
言い得て妙な的を射た答えだからに他ならない。
私はこの二人を失いたくないだけ。
いつまでも隆を好きでいたいし、ユイともこうして友情を越えた関係でいたい。
そんなわがままな考えが許されるのは、それこそ王であり続けるしかないのだろう。
「とにかく! 理不尽だろうと倫理に反してようと………… 王様の命令は絶対だからな?」
「そうですか…… ならどんな命令であろうともそれは納得せざる得ませんね?」
ニヤニヤと私の顔を覗き込んではふたり、
もう言葉は必要ないとばかりに交互に私の唇を奪っていく。
「ユイ…… ホントに私はあなたの事を………… んっ……」
「隆………… 私、後悔なんてしてないしこれからもずっと一緒に………… あっ…………」
にっこりと微笑むふたりの笑顔が、
涙で溢れた私の瞳の中で歪んでいる。
「ただし! 俺以外の男と浮気するのは絶対に許さないからな?」
「あ、それはユイもです! ユイ以外の女とキスはおろか手を繋ぐ事さえ許しませんからっ」
「もうっ…… あなたたちって………… ホント馬鹿なんだから…………」
私は指で涙を拭うと、もう一度ふたりの顔をしっかりと見つめ返した。
他人から見てどうあれ、私にはもう二人の姿は歪んで見えない。
このまま、ずっといつまでも私たちは、歪な三角関係を保ち続けていくのだから。
「じゃぁ………… 何はともあれいちおうやっとく?」
「まあ、出来レースもいいとこですけどね」
「だ、駄目よ? たとえ答えがわかっていても、やっぱり過程は必要なんだからっ」
私の相変わらずな発言を聞いて、思わず声を上げて笑い出すふたり。
その態度に私はすこし頬を膨らませるも、すぐにつられるように笑ってしまっていた。
「こほん…… それじゃぁいくよ?」
「はいです♪」
「うん」
そう言うと私たちは、小さなベッドでピタリと身を寄せあいながら、
右手をあげ、声高々に笑顔で手を振った。
「「「王様じゃんけん!? じゃんけんほいっ!!!」」」
──完 ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m 2012.12.01