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秘密の青い鳥
【その他 官能小説】

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秘密の青い鳥-5

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「ふふふ」

 ある日、大学の実験室で塔子さんが含み笑いをしているのを見て、僕は嫌な顔をする。

「何ですか気持ち悪い」

「いや……思い出し笑いだ。気にするな」

 塔子さんは実験台の上に寝そべったまま、クスクス笑っていた。
 ちなみに彼女は素っ裸で、実験台の上には白衣が敷いてあるだけ。

「思い出し笑いはスケベな証拠ですよ?」

 僕はビーカーの上に漏斗を設置し、その中に濾紙を敷いた。
 ついでにいうと、上半身裸でズボンだけを履いている。

「なら、その説は正しいな」

 塔子さんはごろんと仰向けになって大きく息を吸う。
 彼女の剥き出しの胸は重力により多少横に広がってはいるが、50歳前にはとうてい見えない張りのある良い胸だ。
 僕はバーナーに火を着けて、水を入れた丸底フラスコをその上にセットした。

「で?何を思い出してたんです?」

 塔子さんの裸体を眺めつつ聞いてみると、彼女は肺に溜まった空気を吐き出す。

「変な議題を出してきた学生が居てな」

「変な議題?」

 僕は首を傾げながら濾紙を敷いた所に、挽いたコーヒーの粉を入れる。

「ああ『5歳年上の又従姉である女性を酔った勢いで抱いたら思いの外気持ち良く……その後、軟禁状態でひと晩中抱き続けたのは恋か否か』」

「……それはまた……」

 自分と同じ状況に陥った学生に少し同情した……答えは簡単、『恋』だ。

「本人的には難題だったらしい」

 又従姉で歳の差5歳ならまだマシだな……こっちは母親で18歳差だし。
 ポコポコと丸底フラスコが音を立て始めたので、僕はバーナーを消して沸いたお湯を漏斗に注いだ。

「議題を出したからには結果をレポートにして提出しろと言ったら、奴は律儀に提出してきたんだ」

「そんなに面白い内容だったんですか?」

 実験器具でコーヒーを入れた僕は、それをカップに移して塔子さんに持っていく。
 さすがにビーカーのままじゃ熱くて持てない。

「『隣に住む5歳年上の又従姉は、僕の青い鳥だった』だとさ」

 塔子さんは可笑しくて堪らないと笑い続けた。

「……何がそんなにツボなんです?」

「ふふっ……私が『青い鳥』なら『カッコウ』だな、と思ってな」

「ああ、成る程」

 カッコウは他の鳥の巣に卵を産んで育てさせる鳥だ。
 僕は実験台に腰を降ろしてコーヒーを啜りながら納得する。
 塔子さんはうつ伏せの姿勢になると、両肘をついてコーヒーの入ったカップを持った。
 暫く褐色の水面を眺めた後、珍しく声のトーンを落として僕に問いかける。

「後悔しているんじゃないのか?」

 塔子さんの問いかけに僕は目を丸くして驚いた。
 彼女がこの関係について何かコメントを求めてきたのは初めてだったからだ。


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