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Twin's Story 外伝 "Hot Chocolate Time"〜電撃告白タイム
【青春 恋愛小説】

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電撃告白タイム-4

 「おい、久宝!」
 「なんすか?ミカ先輩。」
 「ケーキ持って来い!」
 「あのね、ここ居酒屋っすよ。そんなの置いてあるわけないじゃないっすか。」久宝はあきれ顔で言った。
 「じゃあ表のコンビニで買ってこいよ。ほら、釣りはいらないから。」ミカは財布から五千円札を取り出して久宝に与えた。
 「ちょ、ちょっと、ミカ先輩、こんなに必要ないっすよ。五千円なんて。」
 「いいから買ってこい。そこで一番高いケーキ買ってくりゃいいんだ。とっとと行って来い。」
 久宝はしぶしぶその五千円札を握りしめてテーブルを離れた。
 「食べたいもの、思う存分食ったか?海棠。」
 「はい。ありがとうございます、ミカ先輩。それにケーキまで・・・。」
 「何だか今日はあんまり打ち解けてないね、海棠君。」美紀が豚バラの串を手に取ってケンジに差し出した。
 ケンジはそれをためらいがちに受け取って言った。「そ、そんなことありませんよ。」
 「何か緊張してねえか?」堅城が言った。
 「ミカ先輩が、一年前の恥ずかしい事件を持ち出したりするから・・・・。」
 「恥ずかしい?事件?」小泉が言った。「おまえミカ先輩に迷惑かけただけだって、さっき言ってたよな。それのどこが恥ずかしいんだよ。しかも事件って。」
 「そうだそうだ。」ミカが手羽先に噛みついたままで言った。
 「め、迷惑かけるのって、恥ずかしいことだろ?社会的に。」
 「いまいちしっくりこねえんだが・・・。」堅城が言った。
 「やっぱり、言っちまうか、海棠。みんなに。」脂まみれの手でケンジを指さし、愉快そうにミカが言った。
 「やめて下さいっ!」ケンジは真っ赤になって大声を出した。
 ミカが残りのメンバーに向かって言った。「ごめん、みんな。ほんとはその時、無茶苦茶恥ずかしいこと、こいつしでかしたんだが、さすがに今、こんなだから、勘弁してやってよ。」
 「ちぇっ。」小泉がつまらなそうに眼鏡を外し、手で目をごしごし擦った後、すぐに掛け直した。
 久宝が手にコンビニの袋を提げて戻ってきた。
 「どんなにがんばっても千二百円っす。コンビニのケーキ。」お釣りを渡そうとした久宝の手を押しやって、ミカは言った。
 「釣りはとっとけ、って言っただろ。ここの払いの足しにしろ。さっき、焼き鳥もいっぱいサービスしてもらったしね。」
 「気っ風いいっすね、相変わらず。」久宝は笑った。
 「ところで、」小泉が眼鏡を外しながら言った。「ミカ先輩の重大発表、まだ聞いていないんですけど。」
 「おまえ、また眼鏡磨くのか?レンズ、薄くなって、度が弱くなっちまうぞ。」堅城が言った。
 「俺も聞きたい。ミカ先輩の重大発表。」ケンジが言った。
 「え?おまえが?」
 「は?」
 「海棠も聞きたいのか?」
 「そ、そうですけど。いけませんか?聞いちゃ。」
 「変なやりとりだな。」久宝が割り箸で皿を叩きながら言った。「言って下さいよ、ミカ先輩。みんなに。」
 「わかった。よし!海棠、こっちに来い。」
 「え?」ケンジは身構えた。
 「いいから来いよ、あたしの隣に。」
 美紀はにっこり笑いながら、黙って大きくうなずいた。
 「な、なんで重大発表で俺がそこに・・・。」
 「心配するな。殴ったり蹴ったり飛ばしたりかじったりするわけじゃないよ。」
 「かじられたんじゃ、たまりませんよ。」ケンジは立ち上がって、ミカの横に恐る恐る正座し直した。
 「みんな、よく見ててね、ミカの重大発表。」美紀が楽しそうに言った。
 「え?見る?」
 「重大発表を?見るんすか?」
 ミカは突然ケンジの両頬を両手で挟み込み、彼の口を自分の口で塞いだ。
 「んんんんんっ!」ケンジは目を剥いて呻いた。
 「おおおっ!」小泉は眼鏡を上げて食い入るようにそれを見た。
 「ええっ?」久宝は皿を叩くのをやめて、凍り付いた。
 「な、何とっ!」堅城は思わず立ち上がって拳を握りしめた。
 「やったね!」美紀はとびきりの笑顔でミカとケンジの熱いキスシーンを微笑ましく見守った。
 ミカはいつまでも口を離さなかった。ケンジはめいっぱいおろおろしながら最大級に赤面していた。

 「というわけで、」ミカが店を出たところで言った。「あたしと海棠はこれから一緒に帰る。引き留めないでくれ。それから、あたしの電撃告白に付き合ってくれて、ありがとう、みんな。海棠もあたしの申し込みをOKしてくれたし、これから温かく見守ってもらえるとありがたい。じゃっ。」
 一気に言いたいことをまくし立てた後、ミカは腕をケンジのそれに無理矢理絡ませて、夜道を遠ざかっていった。後ろ髪を引かれるようにケンジは一度振り返ったが、そのままミカに引きずられるようにして、強制的に連行されていった。
 「ミカ先輩らしいね。」小泉が拭き終わった眼鏡を掛け直して言った。
 「海棠のやつ、ああ見えて、けっこうまんざらでもないんだぜ。」堅城が腕組みをして言った。「あいつ、かなりミカ先輩のこと、気にしてたからな。」
 「そうなの?」美紀が言った。
 「そうすよ。サークルの時はプールでいつも熱い視線投げてるし、俺との会話の話題でも必ず一回はミカ先輩の名前がヤツの口から出てくるんすから。」
 「へえ。」美紀は嬉しそうに笑った。
 「それはそうと、ミカ先輩、一人で全額置いていきましたよ。ここの払い。」久宝が申し訳なさそうに言った。「変な気起こすんじゃないぞ、って捨て台詞残して。」
 「近いうちに、祝宴上げようよ。二人のために。今度はあたしたち持ちで。」美紀が言った。
 「いいっすね。」三人の男子学生も声をそろえて言った。


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