電撃告白タイム-2
12月1日。居酒屋『久宝』。
「海棠、」ミカが身を乗り出して、テーブルの反対側に座ったケンジに言った。口からスルメの脚が飛び出している。
「はい、何でしょう、ミカ先輩。」
「あんたこの後、予定ある?」
「え?もう二次会の話ですか?まだ来たばかりでしょ。」
「いいから。どうなの?」
「別に帰って寝るだけですけど。」
「そうか。寝るだけな。」ミカはひどく嬉しそうな顔をして、スルメの脚を口に押し込んだ。「じゃあ、あたしに付き合って。」
「い、いいですよ。」
「おい、久宝、」ミカは一転して険しい表情で、ケンジの隣に座った久宝に顔を向けた。
「なんすか?」
「おまえんちはいつまで待てばビールが出てくるんだ?」
「たった今座ったばかりでしょ?先輩。ビール頼んだの、ほんの30秒前っすよ。っつーか、つまみのお持ち込みは当店では禁止となっております。なんすか、そのスルメは。」
「座ってすぐから、何か口に入れとかないと落ち着かないんだ、あたしは。それよりビールはどうした、ビールは。」
「だから、すぐに来ますってば。」
「おまえ行って持って来い。自分ちだろ。」
「わかりましたよ。ったく・・・。」久宝は立ち上がって厨房に入っていった。
でかい図体の堅城が腕組みをして野太い声で言った。「今日は何だか、ミカ先輩、最初っからテンション高くないっすか?」
「なんでなんですか?美紀先輩。」眼鏡をハンカチで拭きながら小泉が隣の美紀に訊いた。
「言っていい?ミカ。」美紀は右隣に座っているミカに訊ねた。
「いいよ。別に。」
「え?何か理由があるんすか?」久宝が運んできた生ビールのジョッキを真っ先にミカの前に置いて訊いた。
「重大な発表がある。」ミカが凄みのある声で言ったので、後輩の男子学生四人は一様に居住まいを正した。
「実はね、」ミカは一つ咳払いをして身を乗り出した。テーブルの一同は固唾を呑んでミカを見た。
「とりあえず乾杯しよう。」
がたがたがた。久宝は座布団からずり落ち、ケンジは割り箸を吹っ飛ばした。
「海棠の二十歳の誕生日を祝ってー。乾杯っ!」ミカがジョッキを高らかに持ち上げた。「か、乾杯。」一同もそれに倣った。「おめでとー。」