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夢拾参夜
【二次創作 その他小説】

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夢拾参夜-7

第拾参夜

 こんな夢を見た。
ぼくは訴えられ、弁解の余地も無く絞首刑となった。『十三階段』を知っているだろうか。死刑台の階段は十三段ある故に、『十三階段』とも呼ばれている。十三は、不吉な数字らしい。特に欧米では不吉な数とされており、不吉とされる由来については諸説紛々だ。イエス・キリストと十二人の弟子達が最後の晩餐の際にテーブルについた人数が十三人であった為という説や、処刑の日が十三日の金曜日であった為という説がある。またイエスを裏切ったイスカリオテのユダが『十三人目』となる為、という説もある。その他、古来より使われて来た十二進数に収まり切らない為という説もある。その為欧米では『十三人』、または『十三人目』になることを大変嫌う。因みに、タロットでは『死神』を表している。それに、飛行機の座席番号には『十三番』は無いらしい。ぼくは、裸足のまま十三階段を上る。冷やりとした、足に伝わる感覚はぼくの意識をじわりじわりと苛み蝕んでいく。「ぼくは無罪だ」などと、叫べたらどんなに良いだろうか。最後の裁判でも、ぼくは有罪だった。ぼくが殺したという女性の娘は、手錠を掛けられたままのぼくの頬を思い切り叩いた。彼女
は泣いていた。それが綺麗だ、と思ったぼくは病気なのだろうか。ぼくは、精神障害者なのだろうか。生き続けた方が幸せか、死んだほうが幸せか。そもそも、幸せって何だ? 漫画や小説の主人公は、毎日の同じ繰り返しが嫌で変化を起こすのが相場だ。しかし、主人公は往々にして気付くことになる。不変こそが幸せなのだ、と。

 ひたり、じわり、ぞわり。もうすぐだ、もうすぐ終わりの時。結局、階段は十三段も無かった。天井から吊るされた、輪状の縄が見える。輪の下方には、結び目があった。

―――もういい、こんなことを考えるのもこれで最後だから。

「さようなら」
ぼくは潔く縄に首を傾け、踏み台を蹴り飛ばした。
 目が覚めた。



第終夜

 今日も、無事に起きることが出来ました。
「おはよう、ぼく」
「おはよう、俺」
この二人をぼくは知っていた。
「相変わらず、状況の変化には追い付けないようだね」
笑って、ぼくを覗き込むぼく。
「なぁーに、口開けてンだ」
腕を組み、ぼくを見下すように見下ろすぼく。

―――何故、ぼくがそこに居る?

「何故、ぼく達が此処に居るかって?それは、哲学的な疑問だね。今まで事実しか受け止めようとしなかったのに、成長したね」
「ここに居るから、居ンだよ。それ以外、理由なんかねぇし」
彼らは夢で見た、もう一人のぼく。……いや、もう二人のぼくだ。ベッドから起き上がったぼくは、呆然としていた。
「いい加減、起きないと駄目になっちゃいますよ」
「お前さ、いい加減に前を見ろ」
 本当に、目が覚めた。

(完)


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