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勝利の女神は側にいる
【その他 官能小説】

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勝利の女神は側にいる-1

《熱い…》
字を間違えたワケではない。本当に熱い。炎天下の中、そう思った。暦の上ではもう秋。なのに真夏日継続中。
《こんな日に何で…》
それもこれも全部、社長〈和哉さん〉が悪い。明らかに僕〈史彦〉を狙っている。そうとしか考えられなかった。

―『史彦。悪いけど例のショップ、お前が見てきてくれないか?』
つい最近、ウチの会社で出店した輸入アンティークショップ。一週間ごとに社長が店内の状況を確認しに出向いていた。
『えっ、僕がですか?社長、今日は何か都合でも悪いんですか?』
『ああ、取引先の部長さんと食事の約束をしてたんだ。時間的に厳しいし、先方様を待たすワケにはいかないだろ。』
実際、事務所内には電話番の女性社員以外、僕しかいなかった。
『分かりました。じゃ、この書類をまとめたら行ってみます。』
『悪いな。頼むぞ。』

−本当はあまり気乗りがしなかった。今日の予想最高気温は32℃。こんな日は涼しい所に隠れているに限る。
実際のとこ、資料をまとめたり、残っていた書類を片付けて平穏無事な一日を過ごす予定だった。しかし、業務命令となれば話は別だ。
『あっちぃ〜…』
もう我慢出来ない。とにかく涼しい場所に逃げ込まなきゃ。
《あっ、確かこの辺に…》
僕の記憶が正しければ、駅から歩いて10分ほどの場所に、最高の環境があったはず…

−『ここだっ!』
派手な外観。表にまで聞こえてくる音楽。パチンコ屋だ。速攻で店に入る。
…ガーッ!
自動ドアが開くと、一気に涼しい風が流れてきた。
『はぁ〜、涼しい…』
平日の昼すぎなのに、ホール内は大盛況。それなりにドル箱を積んでいる人も見受けられた。
『台、空いてっかなぁ…』
汗をふきながら、真っすぐに目的地を目指す。
【北○の拳】。最近、お気に入りのパチスロ。僕はそんなにパチスロ歴は長くない。しかし、この台には完璧にハマった。

−話は二ヵ月ほど前にさかのぼる。仕事帰りに立ち寄ったホールでの事。何の気なしに座った台。それがいきなりの大爆発!!
止まる気配のないコインの勢い。結局、10時頃まで打って最終的には7000枚の激勝。
それから火が点いた。ヒマな時は必ずホールに出向き、リールを回す。大抵、多くても二万円ほど打つのだが、これが面白い様に勝てる。
先月だけでもプラス50万以上。もう、仕事辞めてスロプロになろうか、そんな事まで考えた。

−『さぁて、打つかっ。』
めぼしい台を見つけて腰掛ける。とりあえずは3000円勝負。コインを買って台に流し込む。
…カシャカシャッ!
…ベンッ!ベンッ!ベンッ!
『比較的、甘そうだな…』
ボタンを押しながら自己流の分析。何度か回してるウチにチャンスが来た。高確率のステージに移行したのだ。
『こりゃ、やめらんなくなったなぁ…』
さらに回していると、当たり予告の画面が。
『来たっっっ!!』
この瞬間が最高に興奮する。そして、リール上に揃う777!
…バ○ルボーナスッ!
ゲェッッットッ!!!
心に染み渡るイイ響き。ここからが至福の、そして緊迫の時間だ。
《今日の目標。絶対に歌を流すっ!!》
この台の一回の当たり枚数は大して多くない。しかし、それが連続する場合がある。時には20回や30回、恐ろしい事に50回以上連続で当たる可能性もあるくらいだ。
さらに面白いのは、10回以上連続で当たりが続くと、1/3の確率でアニメの時の主題歌が流れる。これがまた、僕等世代の心をつかんだ。
そして、運命の10回目。
『げっ!ラ○ウッ!』
敵のラ○ウに負けてしまえば、当たりが終わる可能性が高い。
《気合い見してくれよぉ。ケン○ロウ…》
しかし、僕の意気込みと願望は簡単に壊された。
…ブルルルルッ!
ワイシャツのポケットに入れていた携帯が震える。台のみに集中していた僕は、何の確認もせずに電話に出た。


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