勝利の女神は側にいる-12
『ふみ…ひこぉ…わた…し…』
『ぼ…僕も…』
その声を聞いた彼女。動きが激しくなる。強烈に打ち付けられる恥骨。限りなく奥にまでねじ込む様に、完璧に密着させてくる。
『も、もう…ふみひこぉ…あぁぁぁっっ!』
ジワジワと続いていた快楽。それが解放される時が来た。肉壁によって刺激され続けた先端は、限界の信号を僕に送った。
『ゆう…こ…ちゃ…いっ…イキそぉ…』
『あっ!わ…私も…あぁぁぁんっっ!!』
内部の圧力に耐えられず、ついに限界が来た。この時の為なのか、肉剣が太さを増し、奥に深々と突き刺さった。
『ふっ、ふみ…ダメぇぇぇっっ!!』
『あっ!あくぅぅぅっっっ!!』
…どぷっ!びゅっ!びゅくびゅくっ!!
…ガクンッ!ガクガクッ!!
先端が破裂した。それを合図に、彼女の体が激しく躍動を繰り返す。
全ての力を使い切った二人。目を閉じ、布団に倒れ込んでしまった…
−電車の外を見る僕。夜の事は夢じゃない。事実、彼女の家からの帰りだった。
しかし、起きた時には僕独り。彼女はメモを残して、仕事に行ってしまった。
《結局…何だったんだろう?》
彼女の口から一度も【好き】って言葉は出てこなかった。確かに二人は愛し合う行為を行なった。しかし、それが恋愛に直結するワケでもない。
悩みながら電車を降り、家に向かった。
…ブルルッ!
いきなり、携帯が震えた。社長からのメールだった。
〔史彦、顔の痛みは引いたか?腫れが引かない様だったら、明後日に会社へ来てから病院行ってイイからな。〕
そうだ。明後日からまた、仕事を再開する。その事を思い出した。しかし今は、彼女の方が気になる。
僕はある事を思いついた。急いで家へと向かう。これから、色々と準備しなきゃ…
−『フミ君っ!』
そう、僕はホールの中にいた。
彼女の驚いた表情を見つめながら、話し始めた。
『祐子ちゃん、急に来てごめん。でも、言いたい事があって…』
僕の言葉を聞いて、真剣な表情になる彼女。
『明人さんに言われたんだ。僕は鈍感だって。でも、祐子ちゃんの事は分かってるつもりだよ。』
うつむきがちに話を聞く彼女。
『勢いや、流れだけであんな事する人じゃない。僕はそう思ってる。だから…』
沈黙が流れる。短い時間。しかし僕には何時間にも感じた。
『僕と…僕と付き合ってよっ!』
彼女はうつむいたままだった。
《もしかして、僕…》
『順序、逆じゃん…』
顔を上げ、口を開いた彼女。いつも以上の笑顔だった。
『普通は先にコクるでしょ?もぉ、ホントに鈍感なんだからぁ。』
『えっ、じゃあ…』
『断る理由なんか無いって!私でよかったら…』
『イイも何も、祐子ちゃん以外、考えられないよっ!』
興奮気味に話す僕。ついに達成した目標。充実感が、僕を包む。
『ところでフミ君、仕事はいつから?』
『今度の月曜日からだよ。だから、最後の大勝負してくよっ!』
『えっ!?でも、お金ないんじゃ…』
『大丈夫。今日は絶対勝てるよ。』
だって、今の僕には勝利の女神がついている。そう信じて台に向かった。
−閉店間際。僕は、彼女のいるカウンターに向かっていた。そう、大量のコインの入った箱を持って…
−『ありがとうございますっ、AKカンパニーですっ!』
僕は予定通り、月曜日から仕事に復帰した。また忙しい日々か始まる事になる。
しかし、非常に充実していた。目標を達成し、張り合いを見つけた。
しかし、終わったワケではない。これからが始まり。今までのマイナスを取り返し、新たに築き上げていかなければならない事もある。
僕の将来は僕自身が作るモノ。今回の件で、よく分かった。
これからは、少しずつだが皆さんに恩返しをしなきゃいけない。
…ブルルルッ!
《あっ、携帯鳴ってる!》
『はい、もしもしっ!』
〔ヤッホ〜。私だよ〜ん。〕
『あっ、祐子ちゃん!』
〔今日、早く終わりそうかな?よかったら、私んとこに来ない?〕
『もちろんっ!行く行くっ!!』
彼女と浮かれて話していた。が、次の瞬間、背後に巨大なオーラを感じた。
『史彦…お前、イイ度胸してるなぁ…』
恐る恐る振り向く。悪魔の形相の社長がいた…
『復帰早々、何考えてんだっ!!』
『すっ、すいませんっ!』
『全然懲りてないじゃないかっ!!』
『今後、気を付けますからっ!』
『大体、お前はだなぁ…』
いきなりマイナス点を稼いでしまった僕…
これから先も、こんな毎日が続くのだろうか…