#04 研修旅行――三日目-9
「なら、帰ろう、佐倉さん?」
「だから、なんでそうなる!って、おい、腕を組むなコラ!」
相原に右腕をホールドされた私は引きずられるように校門を出た。
そんな私の左肩をポンと林田が叩いてくる。
「あきらめてください。柚子、こう見えて頑固だから」
「……オマエより?」
「ええ、私の百倍」
「…………はあ」
諦念の嘆息。それを吐き出すしかなかった。
なんなんだろう?ほんの数日前まで普通のクラスメイトだった。
ただの他人。佐倉萌の人生においてはモブキャラだったはずなのだ。
なのに、揃いも揃って、妙に個性的な連中である。
――いや、存外、『普通』なんてやつはいないのかもしれない。
みんな、どっかしらがおかしいし、抱えているモンもある。
「…………はあ」
もう一度、溜め息をつく。けれど、こんどのはちょっとだけ意味が違った。
私は「もういいから」と相原の束縛から逃れると二人と並んで歩き出した。
「そういえば、岐島はどうしたんだよ?私よりもアッチだろ、そこの強情デカブツとしては?」
「……消えていた。すぐに捜したのに」
「まあ、仕方ないですよ。私だって気をつけていましたけど、一瞬の内でしたから」
「で、代わりに私ってわけだ?」
「代わりって……拗ねてるんですか?」
「拗ねてねえよ!」
「大丈夫。最初から佐倉さんも誘うつもりだったから」
「そうそう。佐倉さんだけでも柚子が見つけてくれてよかったです」
「はっ……女だけでなにが楽しいんだか」
「やっぱり、岐島君がいてくれたほうがよかったんですか?」
「そういう意味じゃねえよ!やっぱりって言うな、気持ちわりぃ!」