The end of the DragonRaja, Chapter 2[The start in new life]-6
後方へ向かって踵を返すと、地にへたり込んでいるシュリがいた。
彼女は身震いしながら城を眺めている。
彼は自我を取り戻させるために彼女の両肩に手を置き、2,3激しく彼女の体を揺すった。
「シュリさん。シュリさんっ!」
体の振動と共にアランの声が耳元に響き渡るのを感じ、シュリは言い始めた。
しかしまだ完全に思考が現実に追いつかない。
「あ…、あれは…、何…なの?」
「わからない、ただどうやらジャイファンの者みたいです。
右胸に俺らと同じ赤い蠍の紋章を確認しました。
ただ、あんな奴見たことないですよ…。」
とりあえず一旦引きましょう、そう言うとアランはシュリを立たせ、
この場からすぐに離れようとした。
すると、ルアーノギルドのシーフが伝令としてアランの下へとやってきた。
アランとシュリの様子を見て伝令のシーフは、まさか、と思った。
そしてその不安は城内から聞こえる断末魔ですぐさま現実となる。
疾走してきた足をアラン達の元へゆっくりと歩かせながら、
男は口を半開きにし目は大きく開かれ城を見つめていた。
伝令に気がついたアランは声を掛けた。
シュリは未だ膝が笑っている。
「おい、ルアーノ隊の者だろ? 山上では何があった?」
「あ、あぁ、山上も同じだ。
ルアーノさんが未確認の集団がバイサスを攻撃しているから気をつけろ…と。」
「集団? こっちには一人のシーフしか来てないぞ?
今城内で殺戮をやってる奴がさっき山上から来たのを見た。」
「いや、俺達も実際に現場を見ていないから、憶測で集団と定義した。
俺達が戦う前に既にバイサス軍は壊滅してたんだ、一人でやれるとは考えにくかった。」
嘘偽りないという伝令の目を見て、アランは振り返り再び城を遠くに見つめた。
海上要塞の荘厳さは既になく、死屍累々という見た者を気違いにさせてしまう光景を。
(…ということは奴以外に複数の仲間がいるかもしれない。
ならば平原と海上の二手に別れたと考えられる。
そして奴らの殺傷能力は異常だ、危険すぎる…。)
「わかった、一旦ウェスタングレード入り口まで引いて、各隊合流しよう。
ルアーノさんにそう伝えてくれ。
シュリさん、戻りましょう。」
頷いたルアーノギルドの伝令は、山上へ向けて疾走し始めた。
それと同時にアランはシュリと共に後方へ向かった。
「伝令、急ぎ平原の部隊にウェスタングレード入り口へ撤退するよう伝えろ!
俺達も撤退を開始する!」
伝令の疾走する姿を見つめるアランは、海上要塞へと最後の視線を送ろうとした。
だが彼はそうすることなくウェスタングレードへと足早に歩き出した。
平原にいる仲間、そしてリーフのことがアランは気掛りになった。
そして先程の痛みではない別の何かが彼の脳に語りかけてきた気がした。
あたたかくもどこか悲しい何かが。
ただ思案することを彼は阻まれる。
本能がそうさせた。
これ以上のことを思考すれば、きっと精神が崩壊するだろうという配慮だった。
(頼む…、みんな無事でいてくれ。)