The end of the DragonRaja, Chapter 2[The start in new life]-37
城門を出ると、眼前には時を進めている緑が広がっていた。
山吹の花が当たり一面に散りばめられているように。
それを創り出している夕日を、2人は見た。
ただ、それを2人だけで見つめたかった。
その場でそれをするには、人の目がやはり気になる。
彼等はレナス外部へ通ずる橋へと向かった。
夕日は遠きウェスタングレードの山々に隠れようとしている。
それはとても焦らしながら。
川はいつものように流れていた。
ただ隆起する部分のみが、夕日を浴びている。
そこだけが美しい光を生んでいる。
彼等は橋の欄干に身を預け、今日という日に終わりを告げるそれを見つめていた。
アランはそっと視線をリーフへ向けると、仕事をするために結われていた髪が、
今は解放され僅かばかりに束縛の名残を残し波を描いている。
それは瑞々しくはあるが、どこか大人の女性の美しさを奏でていた。
視線に気がつくリーフがふとアランを見た。
慌てて口実を作っても上手くは切り抜けない、だから気がついたことをとりあえず言った。
「…だいぶ、髪が伸びたな。」
あ、うん、そう言いながら彼女はうなじの方へ手を回す。
アランを見ると、既に遠くを眺めていた。
彼は今のリーフと同じように、波を描く髪を持つネリアのことを思い出してしまった。
するとレクトや、別れを告げたヴァルキリー、そして多くの思い出が胸に込み上げてくる。
そんな顔をする彼のことがリーフは少しだけ心配になった。
以前と同じように、受け入れられない事実を前にして苦しんでいる、そう思った。
儚くもここはそんな思い出が残る場所だった。
「アラン…、あたしはさ、ずっとアランが傍にいてくれれば…、
それだけで…いいから。」
悩んでいたわけではないのに、そう言ってくれるリーフの優しさが可笑しくもある。
けれども、その優しさがアランは嬉しかった…。
一方リーフは言葉に出したはいいが、意味深な発言ともとれるこの言葉に恥ずかしくなってきた。
夕日を浴びる彼女の顔は、それを隠しきれてはいなかった。
「だから…、えっと…」
慌てて誤魔化そうとするが、状況打破する言葉が浮かばない。
ただそんなこと以上に突如気持ちは高鳴った。
アランは彼女を後ろから抱き締めた。
慣れない手つき、そして緊張のあまり少し力んでしまっているけれど。
そして言葉で、伝えたかった。
何度も言ったことはあったが、今までのものとは異なるそれを。
「…ありがとな、リーフ。」
彼女は首を縦に振る。
そしてアランの腕にそっと手を当てた。
橋を分断する影はいつまでも重なり合っていた。
彼等を邪魔しないように、川は静かに流れていた。
多くの思い出が詰まるこの世界との離別を決意した者たちが、
デュオとジックが待つセルメニス空洞へと向かった。
セルメニス空洞内部へはこの世界では誰一人として入る事が出来なかった。
だが、デュオがある言葉を発すると道は開かれた。
Memoriesofprovingexistence
この世界の言葉で、存在を証明する記憶。
一つ一つの記憶を繋ぎとめるものがその人自身であり、
同時にその人自身を形成するものが、一つ一つの記憶である。
自分達の過去を、そしてこれからの未来を繋ぎ止めるために、彼等は今この世界を後にした。
人はなぜそうするのだろう
そうすることが人だから
そこに答えはきっと必要ない
Chapter2[Thestartinnewlife]ended.
Itcontinuestochapter3[Memoriesoflife].