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The end of the DragonRaja,
【二次創作 その他小説】

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The end of the DragonRaja, Chapter 2[The start in new life]-35

 リトはピノの墓の前でしゃがみこんでいる。
 そして静かに呟いた。

「あんたには嘘ついちゃったかな…ごめんね。」

 裏切られ、人を信じる事が怖いのではない。
 信じた人がいなくなってしまうことが怖かった。
 彼女もまた戦災孤児の1人だった。

 一流の手腕を発揮するウィザードの両親の娘で、幸せな家庭だった。
 しかし戦争はそれを破壊した。
 戦線が拡大していきレナス市の一部にまでそれは及んだ。
 そして、お前だけは守る、そう言い遺して両親は死んだ。
 確かに彼女自身は守られた。
 だが、これからの幸せな日々はもう失われてしまった。
 孤独による寂しさを、両親は守ってやることはできなかった。
 だから彼女は人との触合いを拒んだ。
 そうさせたのが幼い時期の肉親との死別。
 戦時下で皆自分自身が生きることが精一杯で、他人の事に目を向けることは難しかった。
 それが彼女にとってせめてもの救いとなる。
 己の過去の悲しみだけで済んだ。
 他人の愛情や優しさが生むものが、再び失われる新たな悲しみ、それを得る事はないから。
 彼女は誰の手も借りずに、己の技量を伸ばしていった。
 
 そしてレクサス、リーフ、アランと出会った。
 最初はこの3人が煩わしい存在だった。
 彼女と年も変わらない連中が楽しそうにしていることが、どこかで羨ましくもあり、

 それが腹立たしく、彼等を避けた。
 だが、彼女が1人魔法の修練をしている時、レクサスと偶然会ってしまった。
 既にレクサスとアランはアルフォンスのギルドに所属していた頃。
 そこであの言葉を彼が言った。
 なぜ彼がそんなことを言うのか、その時はわからなかった。
 けれども言葉の裏にある、彼を、彼の想いを垣間見えた気がした。
 そして彼の『あの時』のことを聞いてわかった。
 結局現実から目を背け、逃げ続け、
 家族が彼女のために遺してくれた未来さえも掴もうとしていなかった。
 己の逃げ道だけをただ探すという日々を終わらせてくれたレクサス。
 そしてリーフとアランは優しく迎え入れてくれた。
 アランもまた両親はいない。
 リーフは家族がいるが、彼女の優しい清らかな心はリトに同情も理解もしようとはしなかった。
 過去のことについては触れないでいてくれた。
 自分から話せる日が来るまで、じっと待ち続けていてくれた。
 日々優しく接しながら。

 それでもやはりこの3人を信頼することは怖かった。
 この戦乱の時代に、絶対に失われない命なんてどこにもない。
 守りきれる命なんてどこにもない。
 それでも幸せな未来が欲しいから、3人は立ち止まることなく先へ歩んでいた。
 明るく笑いながら。
 だから、彼女もまた自分を信頼してくれるこの3人を護りたい。
 失われる怖さはあるが、それ以上に今を未来をこの3人と歩んで行きたい、そう思えるようになった。

「今はもうみんなの事、信頼してる。
 お父さんもお母さんも…こんな気持ちだったのかな。
 …じゃぁ今日はここまでね。
 続きは…帰ってきたら。
 お姉ちゃんと、仲良くね。」

 アイサの墓を一目見ると、行ってきます、そう呟いて彼女はレクサスの下へ歩き出した。
 先日彼等の墓に手向けたブローディアが、彼女をそっと見送った。



「ハームさん、皆元気か?」

「えぇ、色々あったけど相変わらずよ。
 まぁあなたとアランがストリームブリンガーとしてうちを除隊してからは、
 だいぶ静かになったかな。」

 そっか、そう言うレクサスの顔は苦笑いしている。
 
「しばらくの間さ、俺達ここを離れないといけないんだ。
 だから…皆によろしくな。
 ハームさんもギルドマスター大変だと思うけど、頑張ってくれよ。
 俺にとって大事な古巣だしな。」

「そう…、わかった。
 帰ってきたら、彼に土産話の1つでもしてあげてね。」

 彼女の微笑みにただ、あぁ、とだけ答える。
 そしてハームはその場を去った。
 味気ない別れ方かもしれないが、彼女の場合はこれでいい、
 小さくなっていく背中を見てそう思っていた。
 精神的に脆い部分が彼女にはある。
 深い話をすれば、どうしても湿っぽさを拭えないだろう。
 彼女は心優しい女性。
 ただシュリやリーフとは異なる、戦場には不向きな強さを持たない優しさ。
 戦争のない平和な時に、皆で和気藹々とする姿の方が似合う。

「しっかし持てますね…。弟子はからかわれてばかりなんですけど…。」

 初めてアルフォンスの墓の前で腰を下ろす。
 多くの花が目に映る。
 そして自分の手向けたブローディアを見つけた。
 それをしばらく見つめた後、力を何に使えばいいか、わかったよ、とそっと呟いた。


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