The end of the DragonRaja, Chapter 2[The start in new life]-13
帰還したジャイファン軍はすぐさま軍議を始めた。
先に遣わした伝令により、大方の状況を掴んでいるマルトースが口火を切った。
「まずは皆ご苦労であった。
ルアーノ、アラン、ヴァルキリー、各々報告頼む。」
「山上では俺らが戦闘を開始する前に、既に城外の敵は死んでいた。
そして不可解な奴等はどうやらシーフだ。
死体を検証しても皆切断ではなく体を貫通させていた。
そして見たことのないナイフが散乱してあったことから、シーフで間違いない。」
「海上では我が軍が戦闘を始めてからです。
山上からバイサス軍の伝令が海上に到着し、
その後を追ってきた1人のシーフによって虐殺が開始されました。
奴の戦闘を間近で見ましたが、ルアーノさん以上の手練です。
補助魔法の効果があったのかはわかりませんが、横状のアイスブラストで、
バイサス兵の体をナイフが貫通していきました。
また奴の右胸に我々と同じ赤い蠍の紋章があったことから、
どうやらジャイファンの者ではないかと思われます。
ただ、あのような者は見た事がありません。」
「平原では1人のシーフを目撃したのは戦闘開始からだいぶ経過していました。
こちらも1人しか確認していません。」
彼等の報告が終わると、マルトースは眉間にしわを寄せて考え込んでいた。
「ルアーノ、なぜ犯人は集団と思った?」
「あぁ、悪い、あくまでそう仮定しただけだ。
圧倒的な破壊力と、同時に何人もの断末魔が聞こえた。
ただ、アランやヴァルキリーの話を聞くと、犯人は一人っぽいな。
あとな、奴は少し異常だぜ、狂ってる。」
「と言うと?」
「手口が残虐すぎた。
奴は山上の城門をナイフである程度強度を落としてから、
死体を投げつけて強引に破壊した形跡があった。」
「そうか。犯人は一人で山上、海上、平原の順で殲滅していった。
しかも、その手口は残忍でかつ相当強く、そしてジャイファン人の可能性がある。
奴の狙いは何だ…、どうも嫌な予感がする。」
答えのでない場は静寂に包まれた。
そして嫌な予感という言葉が静寂を食らい、再びルアーノは耐え難い不安に襲われる。
「わかった、犯人がジャイファン人という可能性がある以上、
ひとまずこの件をイルスへ報告し、バイサスにも伝えてもらう。
我々は虐殺をしてまでこの戦争を勝ちたいわけではない。
ルアーノ、これからイルスへ使者として赴いてくれるか?」
「ああ、もちろん。急いだ方が良さそうだ。」
ルアーノは席を立ち、マルトースを見る。
マルトースが首を縦に振ると、彼は一目散に退室した。
「他は万一の事を考えレナス外部の封鎖と、市中の警備に当れ。
配備はヴァルキリーに任せる。
敵は強いゆえ、保護魔法は徹底させろ。」
軍議を終え、ヴァルキリー他数名のストリームブリンガーとアルフォンスギルド、
他2つのギルドをレナス外部に配置し封鎖を準備する。
市中警護はアランを筆頭にストリームブリンガーと各ギルドが受け持ち、
シュリギルドは隊をレナス外部と市中に二分させた。
リーフはシュリと共に集団墓地へ来ていた。
アイサを弔ったリーフはシュリの腕の中でそっと涙をこぼしていた。
「アイサさん、最期に、アランと幸せにって、言ってくれたんです…。」
「そっか…。」
シュリは彼女の後ろ髪をそっと撫でている。
リーフのすすり泣きが聞こえなくなったところで、静かにシュリは言った。
「じゃぁさ、リーフは絶対アランと幸せになるんだよ?」
リーフが首を僅かに縦に振った。
シュリはアルフォンスの墓を見つめる。
「みんなが…きっと見守っててくれる。
だからね、あたしたちも、今生きてる人達のために、頑張ろう、ね?」
「…はい。」
リーフの瞳からはもう涙は流されていなかった。
代わりに今までにはない彼女の力強い眼差しがあった。
シュリはそれを見て優しく微笑む。
「じゃぁ、行くよ。」
彼女達は集団墓地を後にする。
そしてシュリは真直ぐ前を向いて歩くリーフを見て思っていた。
アイサが託した想いだけは、絶対に潰えさせはしないと。
自分たちのようなことは、もう十分だ…と。
そしてシュリがリーフから目を戻そうとした瞬間、リーフが驚いたように言う。
「…煙?」
シュリも慌ててリーフの視線の方に目をやる。
「あれは…何かが燃えている煙だわ、急ぐよ!」