温泉旅行道中。美弥子の時間 -2
「新司さん、お義母様、いらっしゃい」
恵子の家に着くと、門の前で待っていた律儀な恵子が、嬉しそうに出迎えてくれた。その声を聞いた美弥子(ミヤコ)と忠(タダシ)も玄関から出てきた。
「新司さん、いらっしゃい。ああん、瞳さん、おはようございます」
美弥子が瞳の両の手を握って喜びを表した。
「やあ、おはよう。今日はよろしくお願いしますよ」
忠もにこやかにあいさつをした。
「え、ええ、よろしくお願いします」
美弥子の気さくな振る舞いと、忠の笑顔に瞳は少しドキドキした。
「じゃあ、早速行きましょうか、3時間くらい掛るからできるだけ寛いで下さいね」
「新司くん、途中で交代するから、最初の運転は頼んだよ」
「はい、任せて下さい。その間は、お義父さんとお義母さんは後ろで色々とたっぷり楽しんで下さいね」
「いやあねえ、新司さんたら、なんか言い方がエッチぽいわよ」
「本当よ新司!変な言い方して美弥子さん達に失礼よ」
美弥子が意味深な表情で言ったので、瞳は慌てて新司の口調を窘めた。
「いいんですよ、瞳さん。瞳さんも一緒にドライブを楽しんでくださいね」
忠がにこやかに言ったので、瞳もそれ以上は言わずに引き下がった。
「新司さん、席順どうしようかしら?」
恵子が新司に聞いた言葉に、瞳は直ぐ様反応した。
「あたしが一番後ろでいいよ。忠さんと美弥子さんは、真ん中のシートでご夫婦仲良くね。恵子ちゃんは新司の横でナビをよろしくね」
気を効かせた瞳は、さっさと後部座席に納まった。
(ちぇっ!せっかく瞳さんと仲良くなろうと思ったのに)
忠は残念に思いながらセカンドシートに納まった。そんな夫を見ながら美弥子は心の中で笑った。
(ほほほ、忠くんたら、残念そうな顔して)
美弥子も続けて乗り込み、7人乗りの車内の座席順は以下の通り。
←進行方向 セカンドシート サードシート
【運転席新司】【 忠 】【 瞳 】
【ウォークスルー 】【ウォークスルー】【空 席】
【助手席恵子】【美弥子 】【空 席】
「じゃあ、出発しますよ!忘れ物は無いですか?特にビデオとカメラは忘れていませんね。楽しいことはたっぷりと記録しなくちゃいけませんよ」
「は〜い!」
美弥子が陽気に返事をしたので、みんなは楽しそうに笑った。
(ビデオって、新司ったらこの旅行で何台ビデオを持って行くつもりかしら?)
瞳は前夜に、新司がビデオの充電をしていのを思い出して怪訝そうな表情を浮かべた。何故なら、最近買った高画質のビデオカメラと、古いタイプのビデオカメラの両方の準備をしていたからだ。
「新司くん、バリバリの新車だな。それとこのスモークガラスがいい感じじゃないか。これくらい濃かったら外から見えないだろうな」
「ええ、大丈夫ですよ。中で何をやっても全く見えません」
「まあステキ!でも、この新品のシートを汚しちゃったら、恵子ちゃんに怒られそうね」
「お義母さん、楽しむために買った車ですから、そんなこと気にしないでバンバン楽しんで下さいね。恵子も納車の日に早速汚してますよ」
「いやあだあ、新司さんたらあ」
恵子が身を捩らせて顔を赤らめた。瞳からは見えなかったが、この時の恵子は自身の卑猥な部分に手を添えて身を捩らせていた。
「わはは、恵子、流石だな。じゃあ、遠慮なく楽しませて貰うよ」
「でも、忠くん、やっぱり新司のさんが気の毒だから、カバンからバスタオル出しといてね」
美弥子が主婦らしい気配りを見せた。
『楽しむ』、『汚す』、『バスタオル』それらの単語のやり取りを聞いて瞳は変な想像をしてしまった。
(まさか、車の中でセックスするんじゃないでしょうね…)
しかし、常識的に考えて、新司が婚約者の両親とそんな会話をすることはあり得ないので、直ぐにその考えを打ち消した。
(飲み物か何かを溢したんだわ。一人で変な想像してあたしってバカみたい)
月曜日の朝なので、通勤渋滞を抜けるまでは多少時間が掛る。5人を乗せた車はノロノロと幹線道路を進んだ。
席の前後で陽気な美弥子とおしゃべりを楽しんでいた瞳だが、美弥子が忠と話している少しの時間帯に睡魔が襲ってきた。
昨晩は久しぶりに新司が泊ったことと、今日の旅行の事が楽しみだったことで中々寝付けなかったのだ。さらに旅行中にできない日課の自慰行為をたっぷりしたことが、睡眠不足に拍車をかけていた。