The end of the DragonRaja, Chapter 1[Life and death]-42
「ごめん、待たせた。」
「うん、大丈夫。」
アランはリーフと対面して座っている。
しかし、座ってから会話がまったくない。
水が滴り弾ける音も、穏やかな虫の音さえもない、ただ静寂な空気だけがあたりを包み込む。
リーフはただ黙って俯いている。
その表情を覗うことはできない。
しかし、アランは意を決する。
自分を気付かせてくれた目の前に座っている彼女、
そして自分を心配してくれたそんな彼女の優しい心遣いを跳ね除けてしまった、
苦しい罪悪感があるから。
「あ…のさ、さっきはごめん、お前のこと怒鳴ったりして…。
ちょっと悪い事ばっかり考えて、自分見失ってた。」
リーフは依然視線を合わせようともせず、俯いている。
仕方なくアランも彼女の方を見ずに話そうとした。
しかし、彼女が怒っているのは自分のせいなのだからと、そう思い、受け入れられなくても、
彼女を見て自分の気持ちを真っ直ぐに伝えようとする。
「でもお前が俺をひっぱたいてくれて、ようやくわかったよ。
自分の弱さも、周りを見てなかった自分も。
…だから、ありがとな。」
彼女は先程からの姿勢を崩さなかった。
アランもしばらく俯いてしまう。
「……やっぱ許してもらえないよな。
でも…、いいんだ、今はまだそうでも。これから許してもらえるよう」
アランがここまで言って彼女を見ると、涙がテーブルに落ちていることに気がついた。
「リーフ?」
「違うの…。」
俯き泣く彼女がそっと語り始める。
「あたし、アランが何を悩んでるのか、なんで苦しんでるのか、わからなかった…。
だから雪原の時も、泣いて苦しんでるアランを見て、何もできなかった…。」
リーフの涙の勢いが増す。
アランはいたたまれなくなり、椅子に座り俯いたままの彼女に寄り添った。
彼女を下から見つめ、そっと彼女の右手をとる。
「でも、心配、だったから…。
だから…。」
「うん、わかってる、わかってるよ。
ありがとな、……ごめんな。」
アラン自身もまた彼女の自分への優しさに、
それでいて彼の先程してしまった行為の罪悪感を感じている。
アランは彼女が泣き止むのを、彼女の右手を自分の両手で包みながら待ち続けた。
本来であれば、アランよりもリーフの方が心がぼろぼろだった。
彼女は雪原戦以来、ずっと泣いてばかりだ。
彼女が落ち着きを取り戻してから、アランはそっと彼女を立たせる。
「帰ろうリーフ、おばさん心配する。送ってくよ。」
階下が静かになった事にネリアは気がついた。
そして一人静かに溜息をついた。
リーフを送り届けたアランがドアを開けた。
彼の目に入ったのは、静かに座るネリアの姿だった。
「姉さん、その…、姉さんにも迷惑かけて、ごめんな。」
「あんたのことちゃんと見守らなかった姉の私も悪いわ、ごめん。」
「姉さんまでそんなこと言うなよ、俺が悪いんだからさ。」
今までの彼のせいで、ネリアが暗い表情をして俯いている。
「雪原の前の夕食の時、姉さんちゃんと言ってくれたからさ、レクサスもだけど。
それをちゃんと気がつかなかったのは、俺だから。
だから、ありがとな…。」
「……だったらあんた、明日の朝ごはん作ってよ、その味次第で許す。
じゃ、私寝るから、おやすみ。」
一方的にそう言い放ち、彼の言葉を待たずして、ネリアは階段を駆け上っていく。
その場にあれ以上い続けたら、彼に涙を見られそうだったから。
(あいつの苦しさをわかることができないのは知ってる。
けど、だからこそ、姉としてもっとあいつにしてあげられることがあるのに…。
あの時、ちゃんと育てるって、決意、したのに……。)
自室に入り戸を閉めたネリアは、戸に背をもたれながら静かに泣いていた。
窓の奥にいる月がネリアを優しく包み見守っていた。
Chapter1[Lifeanddeath]ended.
Itcontinuestochapter2[Thestartinnewlife].