The end of the DragonRaja, Chapter 1[Life and death]-41
リーフの右手もまた熱く、痛かった。
泣きながらネリアの下へ走っている。
リーフはドアをノックし、ネリアが出ると、たまらず彼女に泣きついた。
「アランの、気持ち…、考えず、に、言いたい…、こと、言っちゃった…。」
初めは驚いていたネリアだが、事態を飲み込み、
彼女を抱きしめながら肩先まで伸びた緑色の髪をそっと撫でた。
しばらくそうしていると、リーフのすすり泣きも小さくなり、落ち着きを見せ始めた。
「んっと、じゃぁとりあえず上がって、話を聞かせて?」
リーフはこくんと頷いた。
アランはリーフを追い、彼女の家へ向かう。
しかし彼女はいない。
心当たりのある場所を転々と駆ける。
しかし、それでも見つけることはできなかった。
すれ違った者達は2度と顔を合わす事はないと言わんばかりの闇夜がアランを包む。
そして夜の闇はアランを嘲笑っている。
彼は焦った。
だがもう探す当てはない。
(とりあえず一旦家に戻って、落ち着いてからもう一度あいつの家に行ってみるか。)
そう思い家路に着き、ドアを開けると、ネリアとリーフが目の前にいる。
アランは驚きを隠せなかった。
「え…」
しかし彼の言葉は遮られる。
ネリアに強引に締められたドアによって。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、姉さん! リーフに話が」
またも遮られる。
今度はネリアが急にドアを開けたので。
そしてネリアの表情が尋常でないので。
「あんたはそこにいなっ!」
再びドアが強烈な勢いで閉められる。
アランは仕方なく座り込んだ。
「ネリアさん、いいんですか?」
「いいのいいの、あんなのほっとけば。で、話聞かせて?」
「あ…、はい。」
アランはぼんやりとただただ座っていた。
彼に散々警鐘を鳴らしてくれたレクサス、ネリア、そしてリーフ。
それなのに、彼らの思いとはすれ違ってしまったアラン。
今の彼は償いの意味も込めて、ただ全てを受け入れ、黙って待つしかなかった。
「そっか、わかったよ、リーフ。うちのバカのために本当にありがとね。」
「いえ、別にそんなつもりじゃ…。ただ心配だったから…。」
「でもリーフも強くなったね〜、色々あったんだね…。
…さて、あいつと話する? 呼んでこようか? あ、もちろんあたしは席外すから。」
「いえ、私が呼んで、そのまま話します…。」
「そっか、わかった。何かあったら2階にいるから呼んでね。」
ネリアは去り際にリーフの頭を撫で、2階へと上がっていった。
それを見送るリーフ。
彼女は項垂れ、テーブルに両肘をつき両手で顔を覆う。
(はぁ…、さっきのあとだから、さすがに気まずいなぁ〜。
しかもアランの家だし…。)
しかし、いくら考え込んでも仕方ないので席を立つ。
そしてなかば諦め、取っ手を回しドアを開けた。
「どうぞ…。」
それだけ言ってすぐさま家の中へ戻った。
他人の家であるにもかかわらず、彼女自身がそう言ったことが、なんともおかしく感じられた。
一方アランも、てっきりネリアが開けるのだと思い込んでいたため、驚きの表情を隠せなかった。
一呼吸ついてから、彼は家の中へ入っていった。
「ごめん、先に装備外してくる。」
「あ、うん。」
アランはネリアの姿がなかったので、幾ばくか安堵した。
先程のアランを閉じ込めたネリアの表情には、さすがにただならぬ予感がしたから。
しかし、束の間の安堵だった。
2階へ上がると、ネリアが自室の戸を開け、アランを見た。
先程の表情が再現されている。
「何しにきたの?」
ネリアのいつもの穏やかな優しい声など微塵もなく、ひどく冷たさを伴った声。
「あ、装備を、外しに…。」
「そう、早くしなさいよ。」
ネリアの部屋の戸が勢い良く閉められる。
今のアランは天涯孤独な茨の道を進んでいるようだった。
ただそれは、リーフにひっぱたかれる前のアランが選択した人生そのものを表していた。
彼がそれに気がつく事はないが。