The end of the DragonRaja, Chapter 1[Life and death]-35
No.10 「meaningoftears」
「そうか…、多大な犠牲を出してしまったな。
ただ、バイサスも同様ゆえ、今夜以降国家戦までは大規模な局地戦は行われることはないであろう。
よってシュリギルドのレナス外部配備の任は今夜を以って解任する。
以降は以前と同様の持ち回りを組み、対応させてくれ。」
「了解致しました。」
「しかし今回の犠牲は、参謀である私の責任でもある、申し訳ない。」
「いえ、現場での最高責任者は私ですので、そのようなことをおっしゃらず」
間髪入れずマルトースがヴァルキリーを制する。
「よいか、ヴァルキリー。
例えそうであっても、お前達は現場でよく働いてくれている。
気に留めることはない。
立場が上である我々が責任を果たすしかないのだ。
この国に忠誠を誓い、この国を守り栄華させることでその責任を果たす。
お前自身も部下を亡くしている。
余計な心労を負うことはない。よいな?」
マルトースは終始悲壮な表情であった。
彼自身、現参謀の地位に立つまではプリーストとして戦線に出ていた。
多くの仲間の死を見遣ってきた彼だからこそ、彼の言葉には重みがあった。
彼はそっとヴァルキリーの震える肩に手を添えた。
犠牲による悲しみに打ち拉がれている暇はなかった。
雪原戦後でもレナス外部の守備はしなければならないのが現状だ。
ここで隙を与え、国を危うくするような事態が起これば、雪原戦での犠牲の意味が問われてしまう。
もっともマルトースの予想通り、雪原戦によりバイサス軍は大打撃を被ったため、
今夜のレナス外部は平穏そのものだった。
イルス内部でもバイサス側についた者の被害は大きかったため、
何らかの動揺や混乱を与える事となり、結果としてイルスの動きも依然沈静としていた。
それでもシュリギルドとアルフォンスギルドは己の最後の任を全うするため、
レナス外部へと来ている。
だが雪原戦での肉体的、精神的な疲れがレナス外部を蝕んでいく。
「シュリさん…。」
「…はい? …確かあなたはハームさんだったわよね?」
「えぇ、ちょっと…、よろしいですか?」
「うん、大丈夫、どんなご用件?」
「先程ギルドの者と協議し、ギルドマスター亡き今、副ギルドマスターであった私が、
役職を引き継ぐことになりました。
ギルドメンバー自体人数が減ってしまったので、
今後大きな任務を任されることはないかもしれませんが、彼の名に恥じないよう邁進していきます。
よろしくお願いします。」
「そっか…。
うん…、わかった、よろしくね。今が大変だと思うけど、頑張ろうね。」
ハームは軽く会釈し、前線へと歩き出した。
シュリが先程ハームに言った事は、自分に言い聞かせているようだった。
シュリも大切な存在を失っている。
しかしシュリは重い足取りをする彼女の後ろ姿が気になった。
共に戦ってきたギルドの中核、そして多くの仲間を失ってしまった彼女は、
シュリ以上に思い悩んでいるかもしれないと思ったから。
それなのに、ハームは無理に気丈に振舞っている気がした。
思わず彼女を引きとめ、何か声をかけようとしたが、今のシュリには何も言えなかった。
アランの心の苦しみを理解してあげることができなかった彼女。
これ以上人を傷つけてしまうことが躊躇われた。
先程はリーフのおかげで自分という糸を繋げることができた。
しかし、今はそのリーフも、アランのことが心配で膝を腕で抱え座り込んでいる。
膝の上に顎を乗せ、ぼんやりと数歩先に視線を向けたまま。
彼女と背を合わせ、リトも彼女と同じようにしている。
彼女の親友であるリトは、こうすることで、リーフの気持ちを少しでも和らげようとしていた。