The end of the DragonRaja, Chapter 1[Life and death]-31
どれほど斬りあっただろうか、吹雪は荒れ狂っている。
ただアランからは先程の怒りは聊か消えている。
アランは右腕を斬り付けられた痛みと、なにより相手の強さで冷静さを取り戻したが、
それでもアルフォンスを傷つけたこの男をただではおけなかった。
リザルトもまた、アルフォンスとの死闘での傷が疼き、それは疲労を与える。
ましてや、彼の目の前にいる男もまた強く、引く隙を与えれば殺されると感じていた。
お互い技を発動させる力はとうに潰え、剣と剣の、力と技の戦いとなり、今は肩で息をしている。
二人が呼吸を整えつつ機を窺っていたその時だ。
「アラン」
手にはアルフォンスの弓を携えたレクサスが駆けつける。
新たな持ち主に託されたその弓を見て、リザルトは理解する。
「そうか、奴は死んだか。」
「貴様ぁぁああ!!」
その認めたくはなかった答えを、手を下した目の前の男が言うので、アランは再び激昂する。
そんなアランの目の前に左手をかざして黙って彼を制するレクサス。
レクサスの目には、最早怒りとか悲しみなどの感情はない。
いかにしてアルフォンスを葬った目の前の男を殺すかという、ひどく冷徹な狂気しかなかった。
アランに吹きすさむ雪はどこか元気がなくなっていき、レクサスに吹く吹雪は勢いを増していく。
リザルトはこの熱い殺意を持つ男と、冷たい殺意を持つ男と対峙して、心中では顔を曇らせる。
感情を顔に出せばそれが合図となり、この男達は同時に攻撃を仕掛けると思ったから。
また、駆けつけたレクサス自身はほぼ無傷な状態なので、戦闘を行えばリザルトの方が分が悪い。
そのため、負傷している彼がまずすべきことは、
ただ冷静な表情をこの二人に見せ続けることだった。
(その後は……。)
ここまで考えた彼は思考を止める。
今の彼にこの状況ではいくら考えても対処方が見つからない。
(ならば、座して死を待つより、…一矢報いるのみっ!)
リザルトは冷静な顔を崩さず、左肩を入れ両手に持った剣を右肩に持ち上げると、
二人に向かって駆け出す。
まずは横一線に剣を薙ぎ二人を避けさせ、彼らが離れたところでアランを狙おうと考えていた。
しかしその時、リザルトの後方からアイスブラストがアランとレクサスの真ん中に放たれた。
「今だ、引いて!」
ノヴァの言葉を聞いて、生への欲求、そしてこの二人をいつか殺すという渇望が沸々と湧き出し、
リザルトの身を翻させた。
ノヴァの攻撃をアランは左に飛び、受身をとって避け、レクサスは右に大きく飛び跳ねて避ける。
だが二人ともリザルトを逃すほどの神経を今は微塵も持ちえてない。
アランは着地体勢からすぐさまリザルト目掛けて突進している。
それはリザルト自身、あの二人の目を見た時からわかっていた。
身を翻すと同時に、最後の力で防御力を瞬間的に向上させる技、ライトニングシールドを発動し、
城へ向かい駆け出す。
ノヴァの最初の攻撃を飛び跳ねてかわしたレクサスは、空中でコンバーティングアーマーを発動し、
リザルトの動きを観察しながら足を前後に開いて弓の弦を引いて、
着地と同時に炎を纏った矢を射る。
弦は重い振動を発し、不気味な音を奏でた。
大きな弧を描いた炎の矢はリザルトの鎧を貫通させ、右肩に深々と突き刺さる。
反動でリザルトは前へよろけるが、彼の強靭な精神が彼の右足を踏み留めさせ、なんとか凌いだ。
ノヴァはこの状況下でも冷静だった。
レクサスの攻撃はリザルトの体力と精神力に一旦任せる。
アランの負傷状態を確認し、縦状のアイスブラストではなく、
横一線のアイスブラストをアランに集中して狙う。
その結果、アランは避けることに神経を集中させる。
それでも戦士の動きでは狙いを定められた攻撃を避けきることは難しく、
今のアランでは致命傷を避けるのが精一杯だった。
そしてノヴァは彼の歩みを止めることに成功した。
リザルトとアランの間に十分な距離ができたことで、対象を2射目を狙っているレクサスへ向ける。
レクサスが2射目の矢を射る瞬間に、ノヴァのアイスブラストが彼を襲った。
回避行動と共に矢を射たので、軌道のずれた矢はリザルトに当ることはなかった。
彼女はそれを確認し、あとは自分自身も徐々に後退しながらレクサスを牽制しようとする。
しかし、今のレクサスは冷徹な狂人だった。
(距離が大分開いたな)
彼は空中でリザルトへの3射目を大きく構えている。
遠距離からのノヴァのアイスブラストをかわすことは、
元々身軽な彼にとっては大して難しい事ではない。
(こいつっ!!)
業を煮やすノヴァはアイスブラストを放つ手を止め、シャークミサイルを発動させた。
己の動きを封じてしまい、かつ範囲攻撃でもなく一撃一撃は通常攻撃の威力と変わらないが、
その攻撃速度と連続性が凶器となる技だ。
今の彼女はリザルトを無事に逃れさせることが唯一だった。