The end of the DragonRaja, Chapter 1[Life and death]-25
雪がちらちら舞い落ちていた。
ここが戦場であることを忘れさせるほど、美しく。
同時に、戦闘が始まる前の静けさを表しながら。
「あー、あんたよくバランタンの市場にうろちょろしてるやつよね?」
「お? まぁ結構出入りしてるかな。」
「やっぱりそうだっか。どうも見たことないやつだから、殺してやろうかと思ってたんだけどね。」
「おいおい…、俺は買い物に行っただけだぜ?」
「買い物ぉ? 嘘だぁー。」
「いやいや、本当だって。別に偵察に行ったわけじゃない、信じてくれよ。」
「だってあの時女連れてたじゃん、付き合ってるんでしょ? いいねいいねー、あついよねー。」
「なっ、このガキ! 何しに来たんだ、ふざけんなら帰れよ!」
「単にバイサス殺せるいい機会じゃーん、わたしあいつら嫌いだし。
あ、でもあんたも嫌い。
局地で会ったら殺すからね。」
高笑いしながら去っていく女。
なにやらあの女とレクサスのひと悶着を発見し、慌ててレクサスの方へ少女が駆け寄ってきた。
「す、すいませんでした。姉がなにやら言ってしまったようで。」
「あ? お前さっきの奴の妹か?」
「はい、わたくしはアンジェリーナと申します。
先程のが姉のシューナです。
姉にはよく言っておくので…どうかお許しください。」
深々とレクサスに一礼すると、彼女は急いで姉を追いかけていった。
(……なんだか随分と性格の違う姉妹だな。)
気分を落ち着かせようと、城外に出るレクサス。
薄暗い空を見上げ、降り注ぐ雪の動きを眺める。
おもむろに右手をそっと前に出す。
先ほどまでの白銀の雪たちが手のひらに落ちると、じわじわその固まりは小さくなり、
手の中で雫へと変わる。
そっと雫が手のひらから垂れ、足下の薄い積雪の中へ落ちて、消えた。
彼は手のひらに集まった雫を握りつぶし、より細かくなった粒が宙へ弾け飛ぶ。
「柄でもないことをするもんじゃないな、やっぱ…。」
城の中に戻る彼の後ろ姿には、言い表すことのできない不安があった。