The end of the DragonRaja, Chapter 1[Life and death]-24
「あれ、レクサスは?」
「あー、あっち。」
アイサの視線の方へ目を向けると、レナス外部前線でレクサスがアルフォンスと話している。
「みんな眠れないのかな。」
「たぶんね。明日雪原だし。そうゆうアランは準備とかは大丈夫なの?
ストリームブリンガーの指揮するんでしょ?」
「大丈夫、あとは寝坊しないようにするだけ。」
「この前の会議遅刻したらしいしね、雪原も遅刻は勘弁よ。」
二人とも笑った。
嵐の前の静けさを振り払うかのように。
「アランちょっといい? シュリさんが呼んでるの。」
そう声を掛けてきたのはリーフ。
彼女と彼が並んで去っていく姿を、アイサはなんとか見つめる。
現実から目を背けないように。
「仕方がないよね。幼馴染かぁ〜…。」
彼女はせめてこれくらいは許して欲しいと言わんばかりの大きな溜息を、ひとつだけついた。
「アラン達には、うちからリーフと10人のプリーストを配備させるわ。そんなかんじでいいかしら?
アラン達の後方拠点が本営になっちゃうから、あたしもいるんだけどね。」
シュリがくすくす笑う。
もう彼女はアランとリーフの関係を完全に理解し、からかっている。
しかし、アランとリーフの表情は変わらない。
言い方が遠まわし過ぎたと後悔し渋い顔をするシュリ。
「はい、わかりました。では明日、よろしくお願いします。」
そう言ってその場を去っていくアラン。
リーフはシュリの傍にちょこんと立ったままだ。
シュリは新たな策を練り、リーフの耳元でささやく。
「ほら、一緒に行きなよ、この前頑張ったご褒美よ。」
「え、そんな…。」
頬を赤らませた彼女を見て、シュリは満足気な表情を彼女ではなく、右の森の方へ解放する。
してやったりとほくそ笑む。
落ち着いてから、また元の表情で彼女の背中をとんっと軽く押してやる。
「上司が言うことなんだから、その好意は受け取っておきなさいな。」
そう言うと、リーフは素直になったようで、軽く会釈をし、とてとてとアランの方へ走っていった。
シュリは彼女のその背を、自分も本当はそうしたいという想いで見つめる。
だが、リーフと交代のごとく、アルフォンスがシュリの傍へ寄ってくる。
「あの子、強いわりにちゃんと乙女やってるのか、若いね〜。」
事の次第を見ていたのだろうか、アルフォンスは理解した。
「そうね、若いっていいな〜…。」
シュリははっとした。
彼女がそう言ったことで、自分がそのような願望を抱いていることを明らかにしてしまったから。
その願望の対象者を明らかにしていないことが救いではあるが。
しかしその憂いは杞憂に終わる、あっさりと。
「年寄り染みたこと言うなよ。」
彼から出てきた言葉にほっとするが、一方でどこか腹立たしい。
そう、アルフォンスの彼自身の事に関する鈍さが。
シュリはとりあえず彼を蹴った。
しかし、あっさりとかわされる。
「ごめんごめん、だいじょうぶさ、美人薄命っていうだろ、シュリはおばあちゃんにはならないよ。」
そう言って笑っているこの男。
謝るどころかむしろひどいことを言っている。
そしてシュリはつい口が滑ってしまった。
しかし、それはやはり彼には意味を成さなかっただろうと後で思う。
「どいつもこいつも鈍すぎるのよっ!」
シュリはふくれっ面をしている。
こればかりはアルフォンスもまずいなぁと思い、とりあえず彼女の頭を撫でた。
戦場では冷静な彼女も、思わずこれには顔を赤らめてしまう。
今は戦場ではないから。
それでも、彼に女性としての顔を覗かれないように俯きながら。