The end of the DragonRaja, Chapter 1[Life and death]-23
「キミのほうがもっと綺麗さ。この満天の星空もキミの美しさには敵わない。」
いつのまにか彼女達の近くにまで来ていたレクサスがなにやら演技し始めた。
「ピノ、お前も好きな子ができたら、こーやって気の利かせたことを言うんだぞ、わかったな?」
「うちの子に変なこと教えない。」
アイサはすかさずレクサスの背後を取り、
右手のナイフの背を彼の首元にひやりと当てて威圧を伴う声で言った。
「あ、姉さん、参った参った。」
「まったく、そんな安っぽい言葉を鵜呑みにするのはリトくらいなもんだよ…。」
彼女は冷たい束縛を解放した。
その光景を見ていたピノはけらけらと笑う。
しかし、彼女の言葉を聞きつけた本人がどこからともなく現れる。
目は笑ってはいるが、雰囲気は笑ってはいない本人が。
「ちょっとちょっとアイサさん、それは聞き捨てなりませんね〜。」
リトはプライドが人一倍高い。
一方でそれゆえに自尊心を傷つけられまいと、誰よりも努力しようとする一面もある。
ただし、破天荒な行動をとることもしばしばだが…。
「いや、リトのことを悪く言ったつもりじゃぁ…、そ、そう、誤解よ、誤解…、うん。」
さすがのアイサもリトには敵わず、アイサもしどろもどろになる。
怒ったリトが誰よりも強い。
「ねーちゃん、リトさんに謝れー。」
「そうだよ、姉さん、リトに謝れー。」
誇らしげにピノの真似を言って見せたレクサスだが、リトを見た彼の顔は、
先程の言い訳をするアイサの顔になっている。
「事の発端はどーせあんたなんでしょうが。」
そう言いながらリトが呪文詠唱の真似をしていたから。
さすがにピノも笑えなかった。
「ねぇ、なんでリトさんはストリームブリンガーに入らないでいるの?
戦い始めたおれより経験豊富だし、呪文の威力だってすごいしさ。」
「ピノ、あのな、こいつこんな性格じゃん、だから誰にも受け入れられな」
レクサスがピノに諭し終える前にリトが彼の頬をひっぱたいた。
「嘘です、素晴らしい性格です。」
「わかればいいのよ。」
ピノが苦笑いしている。
レクサスはこれ以上ここにいると危険だと判断し、
逃げるように周囲を警戒しているアイサの下へ向かう。
「んっと、なんだっけ。あー、あたしの話か。」
リトはピノの横に腰掛る。
「ピノがあたしよりも強くなるって約束できたら、話してあげようかな〜。」
「わかった、約束する。」
14歳の割りに、戦場に出て男らしい顔をするようになった彼の顔を見て、リトは話すことにした。
「あたしさ、両親に裏切られたことあるんだ。あ、もういないけどね。
昔のことは思い出したくないけど、別に恨んではいないよ。
それがあって一人でやってきて力も得たし。
けどやっぱり、どこかで他人を信頼するのが怖い自分がいるかな。
でもね、レクサスは違ったんだ。
『俺だけはお前を裏切らない、何があっても絶対に。だからお前も俺を裏切るな』って言ったの。」
「えー、レクサスさんてそんなこと言える人なんだ。」
「そうなのよ。私に裏切らないって誓っておいて、私にも裏切るなって誓わせたのが印象強くてさ。
人に誓うのは結構簡単に言えるかもしれないけど、逆も言ってきたから。
それにあいつさ、普段はすごいバカなやつだけど、あいつも色々背負ってるものを持ってる。
それがわかって、こいつなら信頼してやってもいいかなって思ったの。
ま、でも私基本的に団体行動好きじゃないから、自由気ままでいるんだけどね。」
「そっかー。でもなんで俺に教えてくれたの?」
「あんたもバカね、さっき言ったじゃない、強くなるって。
あんたにはお姉ちゃんがいる。
血の繋がった人とは切っても切れない関係だからさ、そーゆー絆って言うのかな?
私は兄弟いないからそーゆーのわからないけど、あんたが少し羨ましいかな。
だ〜か〜ら〜っ、あんた、お姉ちゃん大事にするんだよ。」
そう言って彼女は彼の頭をくしゃくしゃ撫でた。