The end of the DragonRaja, Chapter 1[Life and death]-20
「あんた確か、アランってやつよね、結構強いらしいじゃない。」
「ノヴァ…か。」
アランは2連撃技、ダブルアタックを発動させ目の前の男を十文字斬りにし、
倒れた男の陰から歩み寄ってくるノヴァと対峙する。
アランの瞳から覇気が満ち溢れている。
戦士対シーフの戦いであるので、アランは下手に先手は取らない。
破壊力のある重量級の戦士と身軽なシーフとでは、アランが先手を取った際、
ノヴァに攻撃を回避され、その隙にノヴァの攻撃が襲ってくるはずだからだ。
ノヴァが動き、アランに攻撃してくる時の隙を窺う。
その僅かな隙を反撃する形で勝負をつける。
攻撃を受けても、戦士としての厚い防具と、そして防御力増加の補助魔法が掛かっているため、
致命傷を受けない限り、アランには負ける不安はない。
アランが後手に回る限り、致命的な攻撃を避ける動体視力と回避能力を、アランは持ちえている。
しかしノヴァも、彼の後方に保護呪文をかけるプリーストがいることを把握している。
あのプリーストさえ倒せば彼女は有利にはなるが、
アランもそれを黙って見逃すほど甘くは無いのを、彼の構えと目は物語っている。
彼の顔だけをノヴァに向け、左足を一歩前に出し、ノヴァに対してやや垂直な構えを取っている姿と、
ノヴァから一寸たりとも離さない彼の目が。
彼の構えはいつでも前方にいるノヴァに斬りかかることができ、
同時に、後方へ駆け出すことができた。
どれほどこの対峙は続いたのであろうか。
周囲には両の足で立つバイサス兵の姿が少なくなっていた。
耐えかねたのはノヴァだった。
既にバイサスの勝ち目がないことを悟り、彼女は軍を撤退させた。
それを見てアランも、深追いすることを辞めさせる。
ノヴァの背中が後ろに迫る敵を狙いすましているから。
彼女の姿が見えなくなり、あたりに闇夜の静けさが戻ってから、
ようやくアランはリーフ達が待つ方へ振り返り歩を進める。
その途中で、彼は剣を鞘にしまった時、右手がうっすら汗ばんでいる事に気がついた。
ストリームブリンガーの本隊が戦線に加わったことで、戦局は大きく好転した。
結果としてジャイファンの死傷者は予想以上に少なく、
バイサスには手痛い敗走を与えることができた。
そこにはシュリの冷静な判断が築いた基盤の上で、
ストリームブリンガーの活躍があったことが大きい。
しかしそれ以上に、
リーフが最初に到着したストリームブリンガーのシーフ達に万全な補助を与えたことで、
彼らの奇襲が予想以上に成功し、
敵の士気に変化をもたらしたことがこの戦いの戦局の分かれ目だった。
リーフこそが陰の最大の功労者と言えよう。
それをシュリから聞いたアランは、彼女が命令するのでそれに従った。