The end of the DragonRaja, Chapter 1[Life and death]-10
城門から正面の広い通路とこの長い廊下が合わさったところまで来て、
アランたちはそのまま城門のある右へ向かい歩き出す。
左へ行けば、玉座のある2階へと繋がる階段がある。
「飽き性じゃないさ。ただなぁ、リトにももう少しシュリさんのような癒しがあれば。」
「レクサス、もう少し自分のこと考えてから言えよ。」
「そうよね〜。」
アランには悪い予感がした。
(おかしい、今レクサスがぼやいて、俺があいつを非難したところで、間髪入れずに聞きなれた声…。)
レクサスは不信に思うどころか、声の主を一番良くわかっていたので慌てて後ろを振り向いた。
「あっ…。」
なんとも情けないレクサスの声が聞こえて、アランも後ろを振り向く。
そこにはあまりにも不自然な笑顔を振りまく美女…が立っていた。
その悪魔が乗り移るかのような天使の微笑みを浮かべる美女は、
レクサスではなくまずはアランに言う。
「アラン、あのね、さっきアランが言ったことって、半分良い事言ってるんだけど、
もう半分は、レクサスの言うことを、認めてるっていうことなのよね〜。
否定、しなかったもんね〜、ん?」
リトがおどろおどろしくアランに近づく。
アランは無意識のうちに先程のように言ったのだが、激昂しているリトから見れば、
彼女の解釈も納得できないわけではない。
つまりレクサスと同罪は間違いない。
そこまでアランの思考が回った時、彼の両頬にひんやりとするリトの手が触れる。
そしてアランの顔をぐいっと下げ、リトは天使の笑顔とは裏腹な冷酷な瞳を彼に直視させた。
それまでの状況を自我喪失しながら見ていたレクサスに、ようやく意識が舞い戻る。
これは危険だ、という警告の意識が。
レクサスは頭で考えるよりも先に、城門の扉に手を当てていた。
「アラン、またな。」
彼は瞬時に力を入れて扉を開け、なだれ込むように雨の降る外へ駆け出す。
その姿を見たリトからは、もう笑顔はなくなっていた。
悪魔が完全に乗り移った天使は、もう笑顔を浮かべることはない、レクサスを成敗するまでは。
その悪魔の狂気に満ちた天使は、なにやら呪文詠唱を始めている。
「ヘイスト」
リトはレクサスに追いつこうと、颯爽と雨の中を駆け出して行った。
追いついた時、仕置きがどれほどのものか理解できるほど、颯爽に。
ようやく自分への危険が去っていったことと、
先程の詠唱が移動速度上昇呪文だと理解したことで、ほっと胸を撫で下ろしているアラン。
そして彼は認識する、ウィザードを怒らせると怖い、と。
彼はリトの後ろ姿を見ながら、レクサスの無事を祈る。
しかし。
「アラン」
後からの別の女性の聞き慣れた声に心底驚き、アランは今度はすぐさま振り返る。