彼女の苦手なもの-1
「なあ、姐さんって苦手なもんあるのかな?」
それは、ゼビア騎士団員の1人が口にした言葉から始まった。
姐さんと言うのはゼビア騎士団に所属するキアルリア=C=ファン、21歳、通称キャラ姐さん。
彼女は全体陸の中心に位置する島国ファンのれっきとしたお姫様なのだが、優れた武術の才能があり、今は王妃専属の近衛騎士。
ゼビア次期国王代理の魔導師で騎士団隊長のアースと結婚する前はファン国王の護衛を勤めていた程の腕前だ。
「苦手なもんねえ……弱点って事か?」
その彼女の弱点を知ってどうするのか?と、他の騎士団員が聞く。
「訓練で一回ぐらい勝ってみたいと思わないか?」
彼女に勝てるのは旦那のアースと、団長であるスオウぐらいだ。
「弱点狙うってワケ?卑怯じゃね?」
「いやいや『勝った者勝ち』って姐さん自身が言ってるしさ」
彼女は勝つ為なら手段を選ばない。
スオウに対しては流石にしないが、アース相手だと平気で隠し武器を使う。
「成る程ね……探ってみるか?」
こうして『姐さんの弱点を探って勝っちゃおう大作戦』が決行されたのである。
証言1、ゼビア騎士団長スオウ。
「馬っ鹿もぉん!!相手の弱点をつくなど言語道断!!貴様ら!!その性根叩き直してくれる!!」
スオウを怒らせて、無茶苦茶しごかれる。
証言2、アース。
「アイツの苦手なもん?料理は苦手だぞぉ?一度アイツの作ったもん食ってみろよ?味覚が破壊され……そうじゃなくて?弱点?……知ってたら俺が使うっつうの……まあ、攻撃避けまくって体力削るのが一番勝ちやすいけどなぁ、お前らにアイツの攻撃避けられるワケねぇし……んだとお?!役立たずとは何だ!?」
アースに捕まり、全員一発ずつ痛烈な拳を食らう。
証言3、ゼビア国王ドグザール。
「ああん?キアルリアの苦手なもんだあ?そんなに付き合いも長くねえのに知らねっての」
あっさり追い返される。
証言4、ファンの巫女長ミヤ。
『姫様の苦手なものですか?ええ、勿論存じ上げておりますけど、そのような事わたくしがペラペラ話す訳がありませんでしょう?考えが浅はかすぎですわ。大体、ゼビアの人間と言うのは……』
国民性について小一時間説教をくらう。
証言5、ファン国王ラインハルトと、その双子の弟ギルフォード。
『あの子の苦手なもの?ギルフォード、知ってるかい?』
『苦手?弱点って事かい?それなら……背中と耳、それから太ももの内側……』
「くおらっ!!ギルフォード!!そりゃアイツの性感帯だろうが!!」
乱入してきたアースにより魔法の鏡を破壊され、先程よりも痛烈な拳を受ける……が、何だか得した気分。
「う〜ん……後、リン学長とグロウさんか……エンさんは無理かなあ……鏡割られたしな〜」
ボロボロになった騎士団員達は、城の片隅で車座になっていた。