彼女の苦手なもの-5
同じ頃、ドグザールの私室で……。
「騎士団員達にバラしたのお前ぇだろ?」
ドグザールの言葉にイズミはぴろっと舌を出して見せた。
お茶目な王妃の仕草にドグザールな苦笑いする。
たまたまなのだが、以前キャラと3人で居た時にネズミが出た事があった。
その時、彼女は気づかないフリをしていたが、冷や汗はかいてるわ挙動不審だわ……国王夫婦に苦手なのがバレるには充分な態度だった。
ドグザールは知っていたが、敢えて黙っていたのだ。
「あの子が取り乱すの一度見て見たかったんですもの♪」
「悪女」
そうツッコミながらも、スオウにしがみついてパニクるキャラは、いつもと違い年相応の少女で、凄く可愛らしかったのは確かだ。
「でも、お前ぇが教えたってバレたら大変だぞ?アイツの仕返しは怖ぇぜぇ?」
「大丈夫よぉ」
しかし、イズミは甘かったのだ……キャラは自分に危害を加える者に対して容赦はしない。
例え、相手が王妃であってもだ。
数日後
「きゃああぁぁーーーーーーーーーっ!!!!」
穏やかな朝方、ゼビアの城に悲鳴が響き渡る。
「嫌あ!!ちょっとキョウ!!なんとかしてっ!!」
悲鳴は国王夫婦の寝室から。
彼らの寝室は大量の蠢くゴキブリで埋めつくされていた。
「……だぁら言ったじゃねっか……」
とばっちりをくったドグザールはうんざりしながらイズミにつっこむ。
犯人は分かっている……国王夫婦にこんな悪戯を仕掛けるのはキャラだけだ。
「ごめんなさい!!もうしないからぁ!!」
イズミは助けを求めて叫ぶが、寝室のドアの前には犯人であるキャラが陣取っており誰も手出しできない……というか、悲鳴を聞いて集まって人々全員、ニヤニヤしながらドアに張り付いて中の様子を伺っていた。
「キアルリアぁ!!」
王妃の悲鳴と共に、今日も平和な1日が始まる。
更に数日後。
一人一人にこっそりと差し入れられた手作りクッキーを食べた騎士団員達は、味覚を破壊されて3日の間何を食べても味がしなかったという……。
ー彼女の苦手なもの・完ー