彼女の苦手なもの-4
「そこまで!この勝負、ダニーと騎士団員の勝ち!!」
「ええっ?!」
「よっしゃあ!!!」
スオウの宣言にキャラは抗議の声をあげ、騎士団員達はそれぞれの武器を放り投げて勝利の雄叫びを奏でる。
「何で?!」
「何でもクソもあるか?全然、勝負になっとらんわ」
「だってっ……」
「チュウ」
「きゃああぁぁっ!!」
「ぐえっアース!ネズミを何とかしろ!!の前にキャラを何とかしろぉ!!」
スオウの体を登ってきたネズミに、再びパニックを起こしたキャラは勢い余ってスオウの首を絞め、アースはゲラゲラ笑ってヒョイっと手を上げた。
途端にネズミ達はハッと我に返り、慌てて散り散りになって逃げて行く。
「隊長〜」
ダニーは苦笑して肩の力を抜いた。
「ど、どういう事?」
キャラはズルズルとスオウから降りてアースに聞くが、まだスオウにしがみついている所を見るとパニックは去っていないらしい。
「ダニーは魔法使いで中でも催眠術が得意なんだよ。良くもまぁこんだけのネズミに術かけたなぁ」
「いやあ、大変でしたよ」
大変だったのに片手の動きひとつで術を解除されてしまって、少し虚しいが……。
「捕まえるのもなぁ」
他の騎士団員達もハイタッチしながらわらわらと集まってきた。
そして、ニヤッとキャラに笑顔を見せて全員でブイサインを突き付ける。
「「作戦、大成功!!」」
目の前にたくさんのブイサインを突き付けられたキャラは、低い唸り声を搾り出した。
「……参り…ました……」
無敵のキャラから「参りました」の言葉を引き出した騎士団員達は、ワアッとばかりに歓喜の声をあげて大喜びするのだった。
数時間後
「何でネズミ駄目なんだ?可愛いじゃねぇか」
「そこがダメ。つぶらな瞳とか……後、あの細い手足に尻尾!!ちょっと何かしたら潰れそうな弱々しい小さな体もダメ」
「……成る程……」
「ちなみに同じ理由で子猫とかもダメ」
とにかく、保護欲を刺激する弱い生き物は、傷つけそうで怖いのだ。
「意外と優しいのな」
嫌いな理由が傷つけそう、だなんて……また好きなとこがひとつ増えた、とアースはキャラに唇を寄せる。
「何だよ、笑って見てたクセに」
キャラは膨れて体を反らし、唇を避けた。
「パニクるお前なんて中々見れねぇからなぁ」
それでもめげずに追いかけると、彼女は逃げるのを諦めて横を向く。
「意地悪」
「知ってる」
アースはクスクス笑って彼女の頬に熱い口づけをして、そのまま押し倒すのだった。