彼女の苦手なもの-2
「やっぱ弱点とかねえんじゃね?」
「いや、ミヤさんが知ってるって事は何かあるハズだ」
魔法学校にまで行って聞き込みをしようか……そう考えていた時、意外な人物が声をかけてきた。
「私、知ってるわよ?」
それは、ゼビア王妃イズミ。
「王妃?!」
騎士団員達は慌てて立ち上がり敬礼する。
「んふ♪面白そうじゃなぁい?」
「あ、あの……姐さんは?」
キャラはイズミの近衛騎士だ。
大体はいつも傍に居る。
「さっき、こちらの騎士と交代したわよ?」
交代した騎士は『姐さんの弱点を探って勝っちゃおう大作戦』のメンバー……何を企んでいるのか、とイズミに詰め寄られて口を割ったようだ。
「王妃は姐さんの弱点をご存知なんですか?」
「うふふ♪あのね……」
口の横に手を添えたイズミは声を潜めて屈み、顔を寄せた騎士団員達にコソコソと耳打ちするのであった。
数日後
いつもの騎士団訓練にキャラが姿を現した時、訓練場に一瞬緊張が走った。
「?」
キャラは場内の雰囲気に怪訝な顔をしたが、気を取り直して準備を始める。
(……なあんか企んでるな……)
柔軟体操をしながら様子を探るが、コレという確証が無い。
(ま、いっか)
柔軟を終わらせて立ち上がったキャラに、団長スオウが声をかけた。
「行けるか、キャラ」
「はい」
呼ばれたキャラは愛剣である片刃の長剣を右手に持って中央へ進む。
今日の相手は騎士団員の中では10番目ぐらいに強い、確か名前はダニー。
得意な得物は槍……攻撃範囲は広いが、懐に入ったら勝てる相手だ。
「構え!」
スオウの声に2人はザッと構えの姿勢をとった。
「始めっ!」
「でああぁぁああっ!!」
雄叫びと共にダニーが突っ込んでくる。
キャラは突き出される槍先を紙一重で避け、槍の柄に長剣の刃の背部分を当てた。
そのまま柄を滑らせて懐に潜り込み、一気にカタをつけるつもりだったのだが……。
「チッ」
「!!!?」
微かな声が耳に入ったキャラは突然急ブレーキをかけ、バク転してダニーから離れた。