あたしの彼は-1
血管の浮き出た腕があたしの身体を優しく包む。
指先に張り付いた煙草の匂い、尖った喉仏、鎖骨にある小さなほくろ。
全てが大好きでたまらない。
あたしが陽介に見とれていると、彼は不思議そうな顔であたしを見てきた。
「どうした?」
意志の強そうなややつり上がった大きな瞳の中に映るあたしの顔は、さっきの愛し合った余韻でトロンとだらしない表情になっていた。
見とれてたなんて言ったら笑われちゃうかな?
少し恥ずかしくなって彼から目を反らすと、陽介はにやけた顔であたしを見つめてこう言った。
「何、2ラウンド目したくなっちゃった?」
「もう、違うってば!」
ホント、こういうことに関しては鈍感なんだから。
しかし陽介は全然あたしの否定を聞かずに裸の胸に手をなで回してきた。
「メグも最近すっかりエッチになってきたもんなあ。初めて会った時の印象とすっかり変わってしまったよな」
「もう、ホントに違うよ!」
真っ赤であろう熱い顔を、陽介の視線から背け、彼の細身の割りに引き締まった胸にちょこんと乗せる。
すると陽介はケラケラ笑いながらあたしの髪を優しくすいてくれた。
陽介とのエッチはもちろん好きだ。
初めてを陽介に捧げたものの、最初の頃は快感よりも羞恥の方が上回って、なかなか自分をさらけ出すことができなかなった。
そんなあたしを無理強いすることなく、陽介はいつも優しく抱いてくれた。
氷がゆっくり溶けていくようにあたしの身体もゆっくり陽介に開きつつあったあたしの心が一気に解放されたのは、ある蒸し蒸しとした暑い夜のことだった。
友達の広瀬くんの家で飲んでるはずの陽介からいきなり電話があって、「今からメグん家行く」なんて言うから驚いたっけ。
広瀬くんとケンカでもしたのかなと、不思議な顔で彼を迎えると、彼は珍しく余裕のない顔であたしの唇を奪った。
乱暴なキス。
でもなぜだか、あたしの身体は熱くなる。
女慣れしていて、いつもスマートな振る舞いしか見せてこなかった陽介が珍しくあたしを激しく求めていた。