焔の魔導師-4
「まだラインハルト王に言って無いのかい?」
エンが持ってきた書類を受け取りながら、ベルリアはニヤニヤして聞いた。
「驚かせたいんだけどね〜何か、別の事で疑われ始めた」
「何に?」
『ク?』
たまたま来ていた漁師の精霊人、ケイと相方クインが首を傾げる。
「男相手が嫌なんじゃないかってさ」
エンの言葉にベルリアとケイは顔を見合わせて苦笑した。
「そりゃ……ねえ?」
「俺は絶対に嫌だけど」
「ボクだってライン以外は嫌さ〜彼だけが特別って何で分かんないかなぁ?」
「それはエンが女の子と寝るからだろう?」
「だって、メイド服可愛いんだもん」
エンの答えにベルリアは肩をすくめる。
「まあ、君が浮気する理由は知ってるけど……疑われるのが嫌なら話すしかないよね?」
ベルリアが言うとエンはため息をついて頭を掻いた。
数時間後、お茶の時間を見計らってエンはラインハルトの部屋を訪れる。
勿論、ラインハルトの好きなお菓子を持参して。
コンコン
「ライン?エンだけど〜?」
ノックして待っていると、ラインハルトが少しドアを開けて隙間から覗いてきた。
(うわぁ……不機嫌そぉ……)
ラインハルトの表情を見て、エンの顔がひきつる。
「ご機嫌取りに来たからさ、入れてよ?」
じとっと見つめるラインハルトにお菓子の入った籠を軽く上げて見せると、渋々といった感じでドアを開けてエンを招き入れた。
エンは部屋に入ると同時にくるっと振り向いてラインハルトの頬に掠めるようなキスをする。
「きゃあ♪」
途端に背後から嬉しそうな悲鳴。
「ありゃ、居たんだ」
改めて見ると部屋にはお茶の準備をしているメイドが2人。
2人共、とてもキラキラした目をしていた。
どうやら城内にも腐女子は増殖しているらしい。