成り行き-4
「早くあがれよ。ツマミツマミ」
私がこんなに動揺してるのに亨は全く気にしていない。
何よ?!そんなに魅力ないワケ?!ムカつく。
腹がたった私は亨にシャワーヘッドを向けて、勢い良く蛇口を捻った……もちろん、水。
「つうっめたっ!!」
頭から水をぶっかけられた亨は派手な悲鳴をあげて背中を反らす。
「馬ー鹿」
私は反撃される前に湯船から出て脱衣場に逃げた。
ドアを閉めた瞬間、ガラス製のドアに水がぶつかる。
「詩緒姉っ!後で覚えとけっ!」
「もう、忘れたし」
私はドアに向かってベーッと舌を出した後、急いで服を着てツマミ作りにとりかかった。
「も〜亨の方が遅いじゃないっ!」
あんだけ人に文句言っておきながら、自分も長風呂じゃないのよ。
とっくに作り終わったツマミをリビングのテーブルに並べた私は口を尖らせた。
「ははっゴメン。湯船でうとうとしちゃった。てへ」
「てへって言うな。キモい」
亨は頭をガシガシ拭きながらソファーにどっかり座る。
私はソファーには座らず亨の足元に座り、クッションを抱いていた。
これが私達の定位置。
ただし、お気に入りのクッションはさっき亨に精液をかけられたので処分。
今日は枕で我慢する……抱き心地良かったのに、あのクッション。
「とりあえず、かんぱーい」
「ぱーい」
呑気な亨の声に内心舌打ちしながらビール缶を合わせ、口をつける。
亨はビールを飲みながらリモコンの再生ボタンを押した。
始めのどうでもいい予告編をすっ飛ばし、さっさと本編を見る。
内容はアクションもので、スパイが潜入捜査をするって話。
2人共黙々とお酒やツマミを口に運びながら映画に集中。
そうやって集中している時に、亨は必ず私の髪を指に絡めて弄る。
亨の足元に座っているから丁度良い位置にあるんだろう。
絡める指は優しくて繊細で、まるで愛撫されてるようで心地よい。
イヤらしい意味じゃなく、例えるなら猫の毛繕いみたいな感じ。
私が猫だったら絶対喉をゴロゴロ鳴らしているハズだ。
もしかしたら、付き合っていたっていう彼女にもしたのかしら?
そう思ったらなんかムカついた。
思わず嫌がるみたいに頭を動かす。