偽りの歌姫-1
「うわぁ……」
生まれて初めて訪れた王宮は、話しに聞いて想像していたより、何百倍も豪華で煌びやかで素敵だった。
真っ白な大理石の壁。色鮮やかなステンドグラスの窓。雪花石膏でできた神々の彫像が飾られ、広い庭園には美しい花が咲き乱れている。
もう夜だったけれど、幻想的な光を放つ魔法灯火が、昼よりも美しく辺りを照らしていた。
村の皆がお金を出し合ってくれたドレスを着て、あたしは恐る恐る大理石の回廊を歩き、大広間に入場した。
大広間は、更に華やかで素敵だった。
目が潰れそうに豪華なシャンデリアが煌き、一段高座には、玉座が置かれ、国王夫妻がそこに座っていた。
傍らには、とびきり美しい護衛剣士の少女が控えている。
そして、大勢の着飾った貴族たちが、半円を描くように壁際を埋め尽くしている。
右を見ても左を見ても、洗練された美しい人々ばかり。
絵画かおとぎ話の世界に迷い込んだみたいだった。
他に歌う女の子達も、やはり緊張しているらしい。今にも倒れてしまいそうに青ざめている子もいた。
あたしの順番は、一番最後。
王国中からあつまった女の子達が、次々と美声を発揮していく。
一曲終わるたびに、貴族たちから関心のため息や、拍手が起こり、審査員たちが手元の書類に何か書き記していく。
そして、ついにあたしの番。
大広間に、『あたしの』歌声が、静かな旋律を奏で始める。
貴族達も審査員も、厳しい顔の王さまも、冷たい無表情だった王妃さまさえも、うっとり聞きほれ……終わった後も、広間は静まりかえっていた。
誰一人、みじろぎすらしない。
何か良くなかったのかと、不安になった瞬間、割れんばかりの拍手が沸き起こった。
貴婦人達は、ハンカチでしきりに涙を拭っている。
頷きあった審査員たちが断言するより早く、王さまが玉座から立ち上がり、叫んだ。
「フルール・コレッティに、『歌姫』の称号を授ける!!」
もう一度、割れんばかりの拍手が響いた。
他の歌い手たちさえも、拍手してくれた。
「素晴らしかったわ!」
「一生忘れないわ!」
口々に賞賛され、大勢の人から握手を求められた。
信じられない!!
本当に、優勝してしまった!!
『あたし』が歌姫になった!!!!