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若き亀やん、再び!(シリーズ3麻雀編)
【コメディ その他小説】

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戦士の検証-1

支配人の役満へ振り込んだことで、オレはハコ点(点数がなくなること)となり、麻雀は新しい半荘へと進んでいく。オレはこのままでは終わられへんど。この調子が朝まで続いたら数カ月分の給料が無くなってしまうやんけ。どっかで支配人の勢いを止めて風を変えなアカン。

そんな事を考えている間に、支配人の親で新しい半荘が始まった。とにかく支配人の勢いを止めるんなら、どんな安い手でもエエから早上がりに徹することや。

しかし、そう思って焦れば焦るほど麻雀は手が遅くなってくるもんなんや。例えば手牌に『四萬』『六萬』『八萬』が有るとしよう。間チャンの『五萬』をツモれば『四萬』『五萬』『六萬』の順子(じゅんつ)ができるし、『七萬』をツモれば『六萬』『七萬』『八萬』の順子ができる。

手の進み具合によっては、どちらかの牌をツモる前に1枚捨てなアカン場合があるんや。勘を頼りに『四萬』を捨てて、間チャンの『七萬』待ちにしたとする。そういう時に限って『五萬』をツモってしまうんや。ツイてる時やったら絶対に『八萬』を捨ててるはずや。

これが1晩に最低1回、下手したら数回は訪れる『ツイて無い状態』というヤツや。今日のオレは最初からこればっかりやがな…

如何せん手が遅い。どうしても無理に手を進めようとしてポンチーと鳴くが、ツイてない時はかえって手を窮屈にしてしまう。バカヅキの支配人の引きはどうなんやろ?そう思って支配人のツモの様子を見てみた。すると珍しくクズ牌を引いたのか、ツモった牌を見た瞬間に、しかめっ面をしやがった。

うほほ!無駄ヅモみたいやな。ざまあみさらせ!そんなにツキが続いてたまるかい!そのツモ牌を手牌の中にいれたものの、あのツラ見るとさすがの支配人も今回は手が遅いみたいやのう♪

よっしゃ!今の内にこっちの手を進めとこ。そう思ってオレは支配人が捨てた牌をポンと鳴き、不要牌の『一萬』を捨てた。

「それや、国士無双、役満(注:48000点)」

「な、なんやて…」

こ、こいつ、役満をテンパイしてんのにシャミセンこきやがって!何をワザとらしく苦しそうな顔しとんじゃボケ!しかし、支配人のその苦しそうな顔は、牌を崩した途端に元に戻っていた。

ん?デジャブ―?そう言えばさっきも同じことがあったような…。

そうや、さっきもオレから上がった時に苦しそうな顔しとったがな。これには何か秘密がありそうやな。さっきまではイカサマを見抜くために、支配人の手元と捨て牌にしか気を配って無かった。しかし、オレの選ばれし者の勘はこいつの表情も注意しろと騒いでいた。

悔しいけど、今の役満の振り込みでオレがハコ点になったので、またまた新しい半荘に入る。次や!次の半荘が本番や!オレの風を呼び込むんや。先ずは冷静にならなアカン、冷静になって状況を分析するんや。

オレは新たなる半荘を前にしてある儀式を行った。大きく息を吸いながら目をつぶる。そしてゆっくりゆっくりと息を吐き出しながら半眼になる。それだけでオレの意識は歴戦の勇士のように覚醒されていく。オレが一旦このモードに入ったら、百戦錬磨の戦士のように冷静沈着になれるんや。(『若き富田林亀太郎の青春』参照)

オレが歴戦の勇士なった横で、オクレ社長は相変わらずハイテンションで浮かれていた。

「西ちゃわ〜ん、ステキ!」

じゃかましいんじゃボケ!と冷静に検証した。

「今の役満も凄かったでぇ〜♪」

振り込んだオレに気ぃ使えボケ!と冷静に悔しがった。

「西ちゃん、この次もこの調子で行こうか〜!」

こ、この調子でいかれて堪るかいボケ!と冷静に慄いた。

「ところで竹林君、キミは今の振り込みでナンボ負けたか数えてるんか?」

知りたくも無いわボケ!と冷静に現実逃避したくなった。

「うひうひうひひひひ、西ちゃん、勝った金で2人で旅行でも行こうなあ♪ああん、なんだか興奮してきた〜」

気しょいんじゃボケ!と冷静に…

あ―――――――――――鬱陶しい―――――――っ!ワザワザ冷静に考えんでもこいつメチャメチャ鬱陶しいやんけ!歴戦の勇士やったら、冷静に考える以前にこの鬱陶しいオッサンを締め殺しとるど!

先ずはこの鬱陶しいオッサンを何とかせんと勝負に集中できひんど。オレらが不調なんもこのオッサンが横から茶々入れるからやんけ。それにこいつが居ったら普段オドオドしてる支配人が結構強気になっとるしな。いつの間にか『哭きの竜』みたいに斜に構えとるし。

なんかエエ方法ないかな。オレは洗牌をしながら冷静に考えた。おっ、そや!エエこと思いついた。若しかしたら上手い事いくかもしれんど。





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