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今日もいつもの投稿小説のサイトを覗きに行った。
そこはアマチュアばっかが集まったサイトで他にもリレー小説や雑談ができるコーナーも設けられている。
〈皆さん知ってますか?実はあの喜劇王チャップリンはロリコンだったのですよ!!〉
で、その雑談のコーナーで雑学を出し合おうなんて言う、訳分からんレスを立てやがった馬鹿もいる。
〈くっだらねえ。チャップリンがロリコンだったって?だからなに?ロリコンに会いたけりゃアキバでも行ってくれば?〉
ちなみにその投稿小説のサイトを真っ当に楽しもうなんて木っ端微塵にも思っていない。そこでレス荒らしをして楽しむのが自分流の楽しみ方だった。
投稿小説だってアマチュアの駄作ばっかだからほとんど読んだりしない。むかつく作品がやたらと、もー目一杯あるんだ。この前なんて、恋愛小説で「うわ、ぜってーこれ自分のこと書いてやがる」と思えて仕方ないおのろけ小説があって、あまりにムカついたのでケータイを地面に叩きつけてしまい、液晶が死んでしまったと言う、大惨事が発生した。
ところがある日、発見したんだ。
『観察日記』
と言う小説だった。
イカれた小説で、危ない小説で、ぶち壊れた小説だった。
内容は単純。ある少年が人を殺す瞬間。以上。
マジでそれだけだ。少年が殺人対象を見付けて、ナイフで切り殺す。それだけの話。二千字にも満たない短い文章。
始めは冷めた目で読んでいた。
アブねー小説だな。これを書いた奴は完璧スプラッター好きなサイコ野郎だな、とか。
人も殺したことねーのに、よくこんなモンが書けるな、とか。
おいおい、こいつ人殺しした事あるよ、確実に。じゃなきゃ書けねーよこれは、とか。
ヤバいなー、これは。こっちまで殺人を犯したくなるようなヤバさがあるよな、とか。
まあ、こんな感じだった。
スプラッター好きなサイコ野郎ってのは、自分にも当てはまらない訳じゃないから、生理的嫌悪みたいな現象は起きなかったけれど、これはフツーに暮らしてる奴ならば、目も当てられない事請合いの一品。
んでもって、そいつの書いた小説は、『観察日記』の他にも何本かあった。
それらは『観察日記』の続編で、そいつ等も完璧にアタマ逝っちゃってる作品だった。
その中でも、
人を食う
という、その行為。その行為自体には別段驚くべき行為ではなかった。多くのサイコ系小説でも出てくるし、実際、漢民族なんかは食人の文化があるらしい。
ただ、『観察日記』の中に出てくるソイツ。人を殺し、バラし、食ってしまうソイツ。
コイツの食いっぷりは凄まじかった。読んだだけだけど、それでも分かる。まるで目の前で見たように、分かってしまう。
人は美味いのだと。
「人間………食ってみてーな」
その日、始めて人を刺してみた。