キングサイズのベッドの上で<中編>-2
「…………姉ちゃん? ど、どういう事?」
「わ、私に聞かれても…………」
遠ざかる最終列車を呆然と見送りながら、駅のホームへと取り残された私と隆。
ひとつまたひとつと消えゆく灯りを見つめながら、
取りあえず私たちは駅の外へと足を向けた。
ピロリロ〜ン
静まりかえった見知らぬ夜の街に、
間の抜けたメールの着信音が鳴り響く。
──少しばかり強引過ぎましたか? お小言はまた後日(><) よき夏の夜をお過ごし下さい♪
私は無言で携帯を閉じると、
隆に気づかれぬよう赤く火照った頬を拭った。
「ユイなんて?」
「えっ? あぁ………… えと…… お茶目が過ぎてごめんなさいって…………」
「ったく…… とにかく何処か泊まれる場所探さなきゃな……」
とぼとぼと暗闇の中、当ても無く海岸沿いを歩く隆と私。
途中、いかがわしいホテルの灯りが目に止まるたび、
私の胸が否応無しに高鳴っているのがわかる。
「この時間に泊まれそうなとこって………… あんまり見あたらないね?」
「う、うん……」
「観光地ではあるけど…… まあ、時間が時間だしな…………」
「そ、そうね…… この時間だと………… し、仕方ないのかな…………」
沈黙に耐えきれず必死で言葉を紡ごうとするも、
どこか時間ばかり気にして言い訳がましいふたり。
私の手を握る隆の手が、少し汗ばんでいるのがわかる。
「このまま…… 歩き続けてもしょうがないもんな…………」
「ん…………」
「その…… と、取りあえず………… どこか入ろうか?」
「…………そ、そうだね …………取りあえず …………ね?」
落としどころのない会話。
いまさら躊躇う事なんて何も無いはずなのに、
もどかしさにどこか息が詰まりそうになる。
「ね、姉ちゃん? その…… こういうとこ入った事ある?」
「なっ………… 有るわけ無いでしょっ!」
「そ、そうかっ そうだよね? あはは、何言ってんだろ俺…………」
ギュッと私の手を握りしめては、勢い任せにホテルへと足を踏み入れる隆。
慣れないシステムに何度も戸惑いつつも私たちは、
ようやく二人だけの密室へと辿り着くや、
広く大きなベッドに腰を落としては、同時に深く大きな溜息をついた。