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雑踏の片隅で
【その他 官能小説】

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パンドラの匣-12

 ユイの家庭は、ごく普通の明るい家庭だったようだ。
 彼女は特に何の不自由もなく、普通の女の子として育てられる、はずだった。
 
 ユイが中学に入ると、体が急に成長して、女らしい体型になった。
 彼女はその事には無頓着で、自分の体が男にどういう影響を及ぼすか、考えもしなかったようだ。
 その影響を一番受けた人間が、不幸にも身内にいた。
 彼女の父親だった。
 中三の時に、母親が不在の夜、突然襲われたのだという。
 ユイは何が何だかわからなかった。わからないまま、襲われ、父親に犯された。
 父親は済まないと、事後に詫びたらしい。
 それまでは、ユイにとっては優しいごく普通の父親だったのだ。
 俺には理解できないが、そういう間違いも起こりうるのかもしれなかった。

 だが、間違いはそこで終わらなかった。
 ユイは犯されたことを、嫌だとは思わなかったのだ。
 そればかりか、彼女は父親を愛してしまっていた。また、抱かれたいと思い始めてしまった。

 彼女は自分の肉体を利用して、父親を誘惑した。
 父親は葛藤しながらも、また彼女を犯してしまった。
 ユイは自分の父親からやがて快感を与えられるようになり、父親は自分の娘に時には避妊もせずに射精してしまったらしい。
 ユイはその事さえも、喜ばしく思った。彼女は、パンドラの匣を開けてしまったのだ。
 それからユイは他の男など見向きもせずに、父親と交わり続けた。
 父親も悩み、迷いながらも、ユイの肉に溺れた。

 そんな関係がいつまでも続くはずがなかった。
 やがて、父と娘の関係は、母に知れることになった。
 母はノイローゼになり、やがて手首を切って病院に運ばれた。
 命に別状は無かったものの、その後母方の実家に母親は引き取られる。
 
 ユイの父親も心を病んだ。
 ユイと父親は母親が実家に去ってからも一緒に暮らしはしたものの、父親はユイを拒否した。
 父親は自分を責めながら、ユイにもお前のせいだと罵った。
 ユイはそれでも父親を愛し、家事をこなしながら父親の面倒を見たが、ある朝置き手紙を残して父は消えた。
 手紙にはユイへの感謝と詫びの言葉が淡々と綴られていたという。
 父親が貯めたと思われる多額の残高が入った通帳と印鑑も残されていた。

 ユイはその通帳と印鑑を、母の実家に送って、自らの貯金でこの街に来たようだ。
 そこで佇む彼女に声をかけてしまったのが、俺だったという訳だ。


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